請負と準委任の違いとは?システム開発で失敗しない契約形態の選び方
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初めに
本記事では、システム開発の現場に絞って、請負契約と準委任契約の違いをやさしく整理します。定義だけでなく、具体的な開発シーンを交えながら解説することで、発注側・受注側のどちらの立場でも、自分に合った契約形態を判断できるようになることを目指します。
目次
請負契約とは何か
請負契約の基本的な定義
請負契約とは、「仕事の完成」を目的とする契約です。民法第632条では、請負人が一定の仕事を完成させ、その結果に対して報酬が支払われる契約と定義されています。
システム開発においては、「合意した要件・仕様を満たすシステムを完成させ、納品すること」が契約の中心となります。
この契約形態では、作業の進め方や途中の工程よりも、「最終的に完成した成果物が契約内容を満たしているか」が重視されます。そのため、発注側・受注側の双方が、完成の基準を事前に明確にしておくことが不可欠です。
成果物責任の考え方
請負契約の最大の特徴は、契約で定めた仕事を完成させる義務(仕事完成義務)を負う点にあります。
これは、完成したシステムが契約で定めた仕様や品質を満たしていない場合、契約内容に応じて修正・改修などの対応が必要になるという考え方です。
たとえば、要件定義書に記載された機能が実装されていない、正常に動作しない、業務で利用できないといった場合、契約内容(検収条件、契約不適合、保守範囲など)に応じて修正対応を求められる可能性があります。
そのため、要件定義や仕様書の曖昧さは、そのままリスクにつながります。請負契約では「何をもって完成とするか」を文書で明確にすることが、トラブル防止の鍵となります。
請負契約が向いているケース
請負契約は、次のような条件がそろっている場合に向いています。
- 要件や仕様が最初から明確に決まっている
- 成果物の完成が最優先事項である
- 開発範囲や納期、コストを固定したい
代表的なのは、ウォーターフォール型の開発や、機能が明確な業務システムの新規構築です。
一方で、要件変更が頻繁に発生するプロジェクトでは、追加対応が契約外となりやすいため、慎重な契約設計が求められます。
準委任契約とは何か
準委任契約の基本的な定義
準委任契約とは、「業務を行うこと自体」を目的とする契約です。
民法上は委任契約に近い位置づけで、一定の業務を誠実に遂行することに対して報酬が支払われます。請負契約のように、完成(結果の保証)を必須としないのが一般的です。
システム開発の分野では、「一定期間、開発作業や設計、調査、改善提案などの業務を行うこと」に対して報酬が発生します。そのため、契約の中心は成果物ではなく、どのような業務を、どの範囲まで行うかという点になります。
業務遂行責任の考え方
準委任契約では、「成果物責任」ではなく「業務遂行責任」を負います。
これは、契約で定められた業務内容を、専門家として誠実かつ適切に実施していれば、必ずしも期待通りの結果が出なかった場合でも、直ちに契約違反とはならないという考え方です。
ただし、何をしてもよいという意味ではありません。
業務内容を大きく逸脱する、正当な指示に従わない、明らかに業務を怠るといった場合は、責任を問われる可能性があります。そのため、業務範囲や役割分担を契約書で明確にしておくことが重要です。
準委任契約が向いているケース
準委任契約は、次のような状況に向いています。
- 要件が流動的で、途中で内容が変わる可能性が高い
- 作業量や作業内容を事前に正確に見積もることが難しい
- 継続的な改善や検証、試行錯誤が必要
代表的なのは、アジャイル開発、システムの保守・運用、技術支援や調査業務などです。
成果物を固定せず、柔軟に業務を進めたい場合には、準委任契約の方が実態に合いやすいと言えます。
請負と準委任の決定的な違い
責任範囲の違い
請負契約と準委任契約の最も本質的な違いは、「どこまで責任を負うのか」という点にあります。
請負契約では、受注側は成果物そのものに責任を負います。契約で定めた仕様や品質を満たしたシステムを完成させる義務があり、完成しなければ契約不履行と判断される可能性があります。
一方、準委任契約では、責任の対象は業務を適切に遂行したかどうかです。一定の専門性と注意義務をもって業務を行っていれば、期待した成果が出なかった場合でも、直ちに責任を問われるわけではありません。
この違いを理解していないと、「成果が出ないのは契約違反ではないのか」「どこまで追加対応すべきか」といった認識のズレが生じ、トラブルに発展しやすくなります。
報酬・契約期間の違い
報酬の考え方にも大きな違いがあります。
請負契約では、成果物の完成と引き換えに報酬が支払われるのが基本です。そのため、固定価格で契約している場合は、途中で工数が増えると受注側が負担を抱えやすくなります。ただし、仕様変更や追加要望は契約変更・追加見積の対象とする運用が一般的です。
一方、準委任契約では、月額固定や時間単価など、稼働に応じた報酬が設定されることが一般的です。業務を行った時間や期間に対して報酬が支払われるため、要件変更や業務内容の調整にも比較的柔軟に対応できます。
契約期間についても、請負はプロジェクト単位で完結するケースが多く、準委任は一定期間ごとに契約を更新する形が多いという違いがあります。
トラブルが起きやすいポイント
実務で多いトラブルは、契約形態と実際の業務内容が一致していない場合に発生します。
たとえば、日々要件が変わるアジャイル的な開発にもかかわらず請負契約を結んでいると、どこまでが契約内で、どこからが追加対応なのかが曖昧になります。
また、準委任契約にもかかわらず、成果物の完成を当然視してしまうと、「期待した結果が出ていない」という不満につながりやすくなります。
こうした問題を防ぐためには、契約形態と開発手法を一致させ、責任範囲を事前にすり合わせておくことが重要です。
システム開発でよくある具体例
Webシステム開発の場合
Webシステムの新規開発では、最初に要件や仕様が明確に定義されているケースが多く、この段階では請負契約が選ばれやすい傾向があります。
画面構成、機能一覧、納期などが固まっていれば、「仕様通りのシステムを完成させること」が契約の目的として整理しやすいためです。
一方、リリース後のフェーズでは事情が変わります。
ユーザーの反応を見ながら機能を追加したり、UIを改善したりする段階では、要件が流動的になります。このような場合、請負契約のままでは追加見積や契約変更が頻発しやすく、運用負荷が高くなります。そのため、機能追加や改善フェーズでは準委任契約に切り替えるケースが多く見られます。
アジャイル・保守開発の場合
アジャイル開発や保守開発では、最初から要件変更が前提となっています。
短いスプリントを繰り返しながら、優先度の高い機能を順次開発・改善していくため、成果物を事前に固定することが難しいのが特徴です。
このような開発スタイルでは、完成責任を固定しやすい請負契約は実態に合いにくく、準委任契約が適しているケースが多くなります。
準委任契約であれば、「一定期間、開発や改善の業務を行う」という形で契約できるため、仕様変更にも柔軟に対応しやすくなります。
エンジニア常駐の場合
エンジニアが顧客先に常駐して開発や運用を支援する場合、多くは準委任契約が採用されます。
日々の業務内容が変わりやすく、設計、実装、調査、レビューなど、役割が固定されないことが多いためです。
このような働き方を請負契約で行うと、「どこまでが成果物なのか」「追加作業は契約内か」といった点が曖昧になりやすく、トラブルの原因になります。
そのため、エンジニア常駐の場合は、業務内容と稼働時間を明確にした準委任契約の方が、発注側・受注側の双方にとって現実的と言えます。
自社・自分に合った契約形態の選び方
発注側が重視すべき視点
発注側がまず考えるべきなのは、「この契約で何を確実に得たいのか」という点です。
完成したシステムという成果物を重視するのか、それとも開発を進めるための技術力や作業リソースを確保したいのかによって、適切な契約形態は大きく変わります。
成果物を明確に定義でき、完成責任を受注側に求めたい場合は請負契約が適しています。一方で、要件が固まっていない、途中で方針変更が起こりやすい場合は、準委任契約の方が現実的です。
契約形態を選ぶ際は、「管理したいのは成果か、プロセスか」という視点を持つことが重要です。
受注側・エンジニアが注意すべき点
受注側やエンジニアにとって重要なのは、自分がどこまで責任を負うのかを正しく理解することです。
請負契約では、成果物責任を負うため、見積もりや要件定義の精度がそのままリスクになります。仕様が曖昧なまま契約すると、想定外の修正対応が発生し、工数超過につながる可能性があります。
一方、準委任契約では業務遂行責任が中心となりますが、業務範囲が不明確な場合、「どこまで対応すべきか」で認識のズレが生じやすくなります。
そのため、どちらの契約形態でも、契約書で責任範囲と業務内容を明確にしておくことが不可欠です。
判断に迷ったときの考え方
契約形態の判断に迷った場合は、「完成(仕事完成義務)まで責任を負えるかどうか」を一つの基準にすると整理しやすくなります。
完成を契約上のゴールとして固定できるなら請負、要件が流動的で業務遂行を中心に設計したいなら準委任、という考え方です。
あわせて重要なのが、契約書の内容と実際の開発の進め方が一致しているかを確認することです。
契約形態そのものよりも、「契約と実態が合っているかどうか」が、トラブルを防ぐ最大のポイントになります。
まとめ
請負契約と準委任契約は、システム開発において責任の考え方が大きく異なります。請負は成果物の完成に責任を持つ契約で、要件や仕様が明確な開発に向いています。一方、準委任は業務の遂行に責任を持つ契約で、要件変更が多いアジャイル開発や保守・運用に適しています。重要なのは、契約形態そのものよりも、実際の開発内容と契約内容が一致しているかどうかです。成果を重視するのか、柔軟な進め方を重視するのかを整理し、自社や自分の立場に合った契約を選ぶことで、トラブルを防ぎ、安定したシステム開発につながります。
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