
目次
受託開発の意味とは
受託開発とは、クライアント企業が外部の開発会社に対して、システムやアプリケーションなどの開発を依頼し、成果物を納品してもらう契約形態です。発注者が要件を提示し、受託側が設計・実装・テストを経て完成品を納めるという流れが基本で、契約形態は「請負契約」となります。これにより、成果物に対する納品責任はすべて開発会社にあります。
このモデルは、明確な納品物が存在するプロジェクトに最適であり、特定の機能や目的を持つシステムを「完成品」として得たい場合に多く利用されます。Webシステム、業務系アプリケーション、ECサイト、スマホアプリなど、多様なジャンルで活用されています。
受託開発の仕組みと流れ
受託開発の典型的なプロセスは以下のとおりです
【要件ヒアリング・見積もり提出】
まずは、クライアントからの課題や要望をヒアリングし、それに基づいた概算見積もりを提示します。この段階で大まかな予算感・工期のすり合わせが行われます。
【契約締結(請負契約)】
見積もりや仕様に合意が取れた段階で、正式な請負契約を締結します。この契約には納期、成果物、支払い条件などが明記されます。
【詳細設計の作成】
開発に先立ち、具体的な仕様設計を行います。画面構成や機能の詳細、データベース設計などをドキュメント化し、開発に必要な指針を整えます。
【開発・テスト工程の実施】
設計書に基づいてコーディングを行い、機能ごとの単体テスト、結合テストを実施。必要に応じてクライアント確認を挟みながら進行します。
【納品・受け入れテスト】
完成したシステムはクライアントへ納品され、実際の運用環境での動作確認(受け入れテスト)を経て正式リリースされます。
【保守・運用(オプション)】
納品後も、障害対応や機能追加、アップデート対応などを含む保守契約がオプションで継続されるケースが一般的です。
このように、受託開発は「要件に対する完成物を納品する」という明確なスコープに基づいており、成果責任が開発会社にあるという点で、他の開発形態と明確に異なります。
他の開発手法(内製・SES)との違い
受託開発と他の開発手法との違いを正しく理解することは、プロジェクトの進行方法や期待値の設定において重要です。以下のような観点で比較されることが多くあります。
比較項目 | 受託開発 | 内製 | SES(準委任契約) |
---|---|---|---|
契約形態 | 請負契約 | 社内雇用 | 準委任契約 |
主体 | 外部委託 | 社内メンバー | 派遣された要員 |
成果責任 | 開発会社 | 社内 | なし(労務提供) |
スケーラビリティ | △(契約変更必要) | ○ | ○ |
コスト構造 | 固定+成果ベース | 人件費中心 | 稼働時間ベース |
受託開発の最大の特徴は、「完成された成果物を納品すること」にフォーカスされている点です。これにより、クライアント側は仕様と納期を明確に定め、成果物の品質管理や予算配分を管理しやすくなります。
一方、SESは技術者を稼働単位で提供するため、突発的な業務や仕様変更への柔軟性はありますが、納品物に対する責任は負わないのが基本です。また、内製は自社リソースを活用するため、ノウハウ蓄積の面で優位ですが、スピード感や人材確保の課題も存在します。
受託開発のメリット
コスト削減と効率化の可能性
受託開発を活用する最大のメリットの一つは、トータルコストの最適化です。自社内でゼロから開発体制を構築しようとすると、人材の採用・育成・定着までに時間と費用がかかります。それに対し、外部企業に委託することで、初期コストを抑えつつスピーディに開発へ着手することが可能です。
また、受託開発はプロジェクト単位での契約が基本となるため、スポット的な案件や期間限定のシステム開発にも適しており、余剰人員や稼働ロスのリスクも回避できます。
専門知識・技術を持つ開発チームの活用
多くの受託開発会社は、特定業界や技術領域における経験・ノウハウを有しており、最新技術に関する知見やベストプラクティスを持っています。そのため、自社内だけでは対応が難しい領域や先進的な機能要件に対しても、スムーズに対応できる点が魅力です。
また、業界特有の課題を理解している会社に依頼すれば、UI/UXの改善提案や業務フローの効率化など、付加価値のある提案も期待できます。
開発期間の短縮とリスク分散
専任チームによる開発は、要員の確保やタスク分担が効率的に行われており、開発スピードが格段に向上します。特にアジャイル開発やスプリント方式を取り入れる企業も増えており、段階的に機能をリリースしながら改善する手法も主流になっています。
加えて、開発体制が複数人で構成されているため、特定メンバーの離脱や遅延による影響も最小化でき、リスクの分散にもつながります。
受託開発のデメリットと注意点
コミュニケーション不足による認識ズレ
受託開発では、開発会社が成果物を納品する形式であるため、初期段階の要件定義が不十分だと、期待と成果の間にギャップが生まれる可能性があります。たとえば、「当たり前と思っていた仕様」が設計に含まれていない、という事態が起きるのです。
この問題を防ぐには、要件定義フェーズにおいて細部まで共有し、仕様書やプロトタイプなどの形で共通認識を可視化することが重要です。
スケジュール管理と品質のコントロール課題
進行管理を完全に任せてしまうと、開発側の事情でスケジュールが遅延したり、品質が担保されなかったりする恐れがあります。そのため、発注者側にも一定のプロジェクトマネジメント能力が求められます。
実際には、定例ミーティングや中間レビュー、進捗管理ツール(Backlog、Redmineなど)の活用が推奨されます。
契約・仕様変更時のトラブルリスク
受託開発では、契約時に取り決めた仕様や範囲外の変更については、原則として追加費用が発生します。軽微な変更であっても、開発工程に影響を及ぼす場合はリスケジュールが必要になることもあるため、仕様変更のルールは契約書内に明確に記載しておくことが望ましいです。
受託開発と他の手法の比較検討
内製と受託開発の比較
内製は、長期的に見ればノウハウが社内に蓄積され、柔軟な仕様変更や改善がしやすいという強みがあります。しかし、そのためには十分な人員確保と教育体制、継続的な育成が不可欠であり、初期コストは高くなります。
一方、受託開発は短期的な開発プロジェクトに向いており、スピード感と外部知見を取り込む柔軟性に優れています。社内にエンジニアがいない企業や、専任の開発体制が組めない場合には、特に有効です。
SES(準委任契約)との違い
SESは、技術者のスキルセットを活用しながらも、プロジェクト管理や成果責任をクライアント側が担う契約形態です。要件が流動的であるプロジェクトや、既存システムの改修・運用に向いています。
ただし、明確な成果物や納期が求められるプロジェクトにおいては、受託開発の方が適している場合が多く、リスク管理やコストコントロールの面でもメリットが大きくなります。
プロジェクトの性質に応じた選定ポイント
プロジェクトの選定においては、以下のような基準が有効です。
要件が明確で完成物が必要:受託開発
受託開発は、要件が固まっており、完成物としての納品を求める場合に適しています。具体的なユースケースとしては、以下のようなプロジェクトが考えられます。
- 社内業務改善用の受発注管理ツール(要件が固まっており、カスタマイズが必要)
- 短期間での展示会向けデモアプリ(スピードを優先し、限られた期間内で成果物を得たい場合)
- 自社プロダクトのMVP開発の一部外注(社内にUXやデザインの専門人材がいない場合、外部に専門性を求める)
要件が流動的、アジャイルに対応したい:SES
SES(システムエンジニアリングサービス)は、要件が流動的で変化する可能性がある場合に最適です。アジャイル開発を用いて、段階的に機能追加や改善を行うプロジェクトに適しています。
自社に知見を残したい・継続開発を視野:内製
内製開発は、自社のノウハウを蓄積したり、将来的に継続的に開発を行いたい場合に適しています。特に、長期的な運用や改善を重視する場合に、自社内で開発リソースを保持する選択が重要です。
プロジェクトの性格を見極め、最適な方式を選ぶことが成功の鍵となります。
受託開発を成功させるためのポイント
依頼前に明確にすべき要件
受託開発を依頼する前に、以下の要素を自社内で整理しておくことが重要です
- 業務課題と目的の明確化
- システム化の範囲と優先順位
- 想定する納期と予算の範囲
- 必須機能・要望事項の洗い出し
これにより、開発会社との要件定義フェーズがスムーズに進み、品質の高い成果物につながります。
信頼できる開発会社の選び方
開発会社を選ぶ際は以下を基準に評価しましょう。
- 類似案件の開発実績の有無
- 要件の整理力・提案力
- 開発体制(リーダー・メンバーのスキル)
- 品質保証やテスト体制の明示
- 進行中のコミュニケーション方法(Slack、週報など)
複数社へ相談し、比較することで自社にマッチしたパートナーを見つけやすくなります。
契約・進行管理の体制構築
契約時には以下を文書化しておきましょう
- 成果物の範囲と仕様
- 納期とマイルストーン
- 支払い条件(着手金、中間、納品後)
- 仕様変更時の対応ルール
プロジェクト中も進捗管理の仕組み(WBS、週次報告、レビュー)を整えておくと、トラブルの芽を早期に察知できます。
まとめ
受託開発の基本的な定義から、そのメリット・デメリット、他手法との違い、導入時の注意点までを体系的にご紹介しました。
自社の開発ニーズや体制に応じて、適切な委託方式を選ぶことが、事業成長への第一歩です。
「自社の開発を委託すべきか迷っている」「信頼できる開発会社を探したい」という方は、ぜひ一度弊社までご相談ください。専門チームが丁寧にヒアリングし、最適なご提案をいたします。
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Y's Blog 編集部