【完全解説】ユーザー中心設計(UCD)とは?意味・プロセス・実践方法をわかりやすく解説

公開日:2025/12/24 更新日:2026/01/28

【完全解説】ユーザー中心設計(UCD)とは?意味・プロセス・実践方法をわかりやすく解説

公開日:2025/12/24 更新日:2026/01/28

初めに

アプリやWebサイトの成功は、どれだけユーザーの視点に立てるかにかかっています。そこで注目されるのが「ユーザー中心設計(User-Centered Design:UCD)」という考え方です。UCDは、ユーザーの行動や感情を起点に設計を進めるプロセスで、UXデザインの基礎でもあります。しかし、名前だけ聞いたことがあっても、実際にどう進めればいいか分からない人も多いはずです。本記事では、ユーザー中心設計の定義からプロセス、導入のコツ、活用可能な設計フレームワーク、成功事例までを体系的かつ実務レベルで解説します。

ユーザー中心設計(UCD)とは?

定義と考え方の基本

ユーザー中心設計(UCD)とは、プロダクトやサービスを開発する際に、常にユーザーの立場・目的・文脈を中心に置いて設計を行う手法を指します。単なるユーザー調査や意見集めではなく、「ユーザーがどのように考え、何を期待し、どんな行動を取り、どこで迷うか」を理解し、その前提に沿って設計を進める点が特徴です。これは、UIデザイン、サービスデザイン、Webサイト構築、業務システム設計、モバイルアプリ開発、IoT体験設計などデジタル領域に限らず、実空間のサービス設計や製品設計にも用いられています。

UCDでは、「作り手が良いと思うデザイン」よりも「使い手が自然に理解・操作できる体験」を重視します。そのため、開発者視点・ビジネス視点・マーケティング視点だけで判断するのではなく、ユーザー調査で得られたデータをもとに意思決定を行うことが推奨されます。意思決定は常に「ユーザーが目的をスムーズに達成できるか?」という問いを軸に進められます。

ISO9241-210での正式な定義

UCDは国際標準規格ISO9241-210で公式に定義されています。この規格ではユーザー中心設計を、

「製品やシステムの設計において、ユーザーの要求、ニーズ、制約を理解し、それを設計全体に反映させるプロセス」

と述べています。重要なのは、ユーザー中心設計が単一のフェーズではなく、

要件定義 → 設計 → 実装 → 評価 →改善

というサイクル全体に継続して適用される概念である点です。つまり、プロジェクトの初期だけ調査を行い、あとは独自判断で作り続けるのではなく、常に検証と改善を伴う反復型プロセスであるということです。

またISO規格では、UCDが成功するための原則として以下の項目を掲げています。

  • ユーザーの理解に基づいた設計
  • ユーザーの反応や使い方に基づく評価
  • 反復的な設計プロセス
  • 全員がUXの責任を持つ組織文化

つまり、UCDはデザイナーだけではなく、PM、エンジニア、QA、マーケティング、経営層を含めたプロジェクト全体の設計哲学として扱われるべきものです。

なぜ今注目されているのか

スマートフォンやデジタルサービスが日常生活に深く浸透した現代では、ユーザーはUIや動作に対して非常に敏感になっています。数秒操作が分かりにくいだけで離脱し、競合サービスに切り替えられる時代です。SNSや口コミ文化により、不満は瞬時に共有され、ブランドの信頼に影響します。

さらに、近年はUI・UXの品質がプロダクトの売上・継続率・解約率・レビュー評価に直結することがデータで証明されています。たとえばGoogleやAirbnb、メルカリなどの研究では、

「UX改善による摩擦コスト低減は、CVRの10〜80%向上に繋がる」

と報告されています。

そのため、UCDは単なるデザイン思想ではなく、ビジネス競争力を高める方法論として再評価されているのです。

ユーザー中心設計のプロセス

UCDは固定された型ではなく、プロジェクトの性質や開発規模に応じて柔軟に適用できます。しかし、一般的には次のフェーズを軸に進められます。

調査(リサーチ)フェーズ

最初のステップはユーザー理解です。ここでは、インタビュー、アンケート、観察(エスノグラフィー)、ログ分析などのリサーチ手法を用いて、ユーザーの行動・目的・課題を明確にします。

この段階での目的は、次の問いに答えることです。

  • ユーザーは誰か?
  • ユーザーはどのような目的でサービスを利用するのか?
  • ユーザーが困っている場面・ストレスポイントは何か?
  • 競合環境や利用状況(文脈)はどうか?

たとえば、ECサイト改善では次の気づきが得られることがあります。

ユーザーニーズ 調査前の想定 調査後に判明した現実
購入までの導線 商品情報を増やせば安心 価格比較やレビュー検索の導線が不十分
カート導線 CTA文言が原因 実際はUI位置が認知されていなかった

このフェーズで得られた洞察は、プロダクト設計の羅針盤となります。

設計とプロトタイピング

リサーチ結果を基に、ユーザーモデル(ペルソナ)やシナリオ、カスタマージャーニーを作成し、サービス体験の設計を進めます。設計段階では、要件をまとめたらすぐ実装するのではなく、

  • ペーパープロトタイプ
  • ワイヤーフレーム
  • ハイレベルモックアップ
  • 実動プロトタイプ

と段階的に形にして、早い段階からユーザーと評価します。

UCDでは、

「考えてから作る」のではなく、「作りながら検証し続ける」

というアプローチが基本です。

評価とフィードバック

設計が進んだら、ユーザビリティテストやA/Bテスト、ヒューリスティック評価などの手法を用いて、

  • 操作に迷うポイント
  • 理解されない文言やアイコン
  • 誤操作が発生しやすい箇所
  • 思考停止ポイント

を洗い出します。

この評価をもとに改善しながら何度も検証を繰り返すことで、ユーザー体験が磨き上げられていきます。

UCDのメリットと導入効果

ユーザー満足度・CVRの向上

UCDを導入することで、

  • 操作に迷わない
  • 覚えなくても使える
  • スムーズに目的達成できる

という設計が可能になり、結果として顧客満足度、継続率、そして**コンバージョン率(CVR)が向上します。実際にUI改善によって、

離脱率が60%改善、売上が2倍になった

という事例も多く報告されています。

開発効率・コスト削減

意外かもしれませんが、UCDは開発コスト削減にも効果があります。理由は、

「作り込み後の修正ほど高額になるため」

です。

仮に100の作業コストがあるとすると、変更発生時の割合は次のようになると言われています。

フェーズ 修正コスト倍率
調査 1倍
ワイヤーフレーム段階 3〜5倍
実装後 20〜200倍

つまり、初期にユーザー視点で検証することで無駄な設計や機能を大幅に防ぐことができます。

チーム間の共通認識強化

UCDプロセスを導入すると、ユーザー視点が意思決定の中心になるため、

  • 「好み」「感覚」「上司の意見」ではなく
  • 「ユーザーデータ」「調査結果」「定量分析」

に基づいた議論ができるようになります。

これにより、職種の異なるメンバー同士のコミュニケーションがスムーズになり、認識齟齬による手戻りが減ります。

実践に使える代表的な手法

ユーザーインタビュー・ペルソナ

ユーザーインタビューでは、

  • 言葉にしていないニーズ
  • 無意識の行動
  • 背景にある心理

を深掘りします。表面的な回答だけでなく、

「なぜそれを使うのか?」「代替手段は何か?」

などWHYを掘り下げることが重要です。

そこから得た特徴を整理し、代表的なユーザー像「ペルソナ」を作成します。ペルソナには次が含まれます。

  • 年齢、職業、生活スタイル
  • 行動傾向、価値観
  • 使用動機と課題

ペルソナは意思決定時の基準点として機能し、

「この機能はペルソナが本当に必要とするか?」

という問いかけに役立ちます。

カスタマージャーニーマップ

サービスとの接点を時系列に整理した図であり、ユーザーの行動・思考・感情の変化を可視化します。これにより、

  • つまずくポイント
  • 課題が集中するフェーズ
  • 改善すべきタッチポイント

が視覚的に判断できます。

ユーザビリティテスト

これはUCDの中核となる手法で、プロトタイプや実装済みのUIをユーザーに操作してもらい、その行動や失敗、迷い、視線、発話を観察します。

目的は、

どれだけ迷わず目的達成できるか

を検証することで、「意見」ではなく「行動データ」を集めるのがポイントです。

ユーザー中心設計の具体例

Webサイト(CVR改善)でのユーザー中心設計

問い合わせ(CV)に中々繋がらない課題のあるBtoBサービスのWebサイトの事例では、機能紹介やサービス説明を網羅しているにも関わらず特定のページで離脱が多発しており問い合わせ前に何らかの障壁があると考えられました。

そこでユーザーインタビューで原因調査を行った所、訪問者は機能の良し悪し以前に「他社との違いが不明確で、導入の正当性を説明ができない」障壁を抱えていることが分かりました。

この結果を受けて、開発チームは以下のような意思決定プロセスを策定しました。

  • ファーストビューに「他社比較比較表」や「導入後の具体的メリット」を配置
  • フォームの項目を最小限に絞り、問い合わせの心理的ハードルを下げる
  • 自動入力などの補助機能を実装し、途中離脱を防ぐ

これらのプロセスに寄り添った設計に変更した結果、フォーム完了率が大きく向上しました。サイトの役割を「商品カタログ」から「比較変更ツール」へと定義し直したことで、成果を産むWebサイトに生まれ変わりました。

業務システム(作業時間削減)でのユーザー中心設計

社内で受発注管理システムを導入した所、入力ミスが多発し修正作業に多くの時間が取られているケースでは、操作は複雑では無いものの日常業務に大きな負担をかけていました。

現場で利用状況を観察したところ、対応者は電話対応をしながら片手で入力しておりマウスとキーボードを頻繁に切り替えていました。また、確認画面が別ページに遷移する設計がチェック漏れを引き起こしていると分かりました。

対策としてマウス操作を極力減らせるようTabキーのみで入力項目を移動できるようにUIを再設計し、ページ遷移を無くして入力内容をリアルタイムで確認できる画面構成に変更しました。

これにより、入力作業にかかる時間が短縮されミスによる手戻りが減少。現場の実情に沿った改善が実現できました。

BtoB SaaSの管理画面(解約率改善)でのユーザー中心設計

「何でもできる」ことが売りの高性能SaaSをリリースした所、「使い方がわからない」という問い合わせが多く、サポートコストが増え導入直後の解約も相次ぐ事態になりました。

ユーザーアンケートの結果、初期設定時の項目が分かりにくく「何から手をつけていいか分からない」という意見が多く見られました。また、利用者は機能の網羅性よりも「業務ですぐ使える状態にすること」を求めていた事が分かりました。

これを元に設計判断を転換し、初期設定で「まず始めにやる事」に絞ったウィザード形式の動線を導入しました。また、管理画面のダッシュボードに次に取るべきアクションを明示し利用者が迷わない設計を徹底しました。

迷う余地をなくした事で初期設定の完了率が向上し、「使いやすさ」にフォーカスした事で解約率の改善にもつながりました。

UCDを成功させるポイントと事例

社内導入を進めるステップ

UCDを組織文化に定着させるには、

  • 小さく始める(1機能単位で導入)
  • 改善結果を数値で報告
  • 社内共有&仕組み化(テンプレ化)
  • 継続的改善運用サイクルを構築

という流れが効果的です。

よくある失敗と回避策

失敗例として多いのは次です。

失敗 原因
UIだけ改善し、体験価値が変わらない 調査不足
意見中心の議論 データ不足
本番公開後に大量修正 早期検証不足

解決策は、

「データに基づく意思決定」と「反復プロセス」

を徹底することです。

成功している企業事例

AppleやGoogle、Amazonなどは、UCDを組織文化として根付かせています。Netflixやメルカリなども、ユーザー観察とデータ・行動分析を組み合わせた改善サイクルを構築し、継続率とサービス継続利用を高めています。

特に国内でも、

  • 金融アプリ
  • 行政サービス
  • EC・予約サイト
  • SaaS系プロダクト

などで導入が進み、業務効率や継続利用率が改善される事例が増えています。

まとめ

ユーザー中心設計(UCD)は、単なるデザイン理論ではなく、ユーザー視点を軸にしたビジネス戦略かつ開発プロセスです。

調査→設計→評価→改善という循環モデルにより、ユーザー理解を深めながら継続的にUXを改善できます。導入初期は工数がかかるように思えますが、長期的には高品質なプロダクト開発、顧客満足度向上、開発効率化という大きなメリットにつながります。

もし貴社のプロダクトでUCD導入を検討されている場合は、ぜひ専門チームやUXデザイナーに相談し、データ分析から設計実装、テスト、改善まで一貫したプロセスで取り組むことをおすすめします。

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