システム運用費の相場と内訳を徹底解説|適正コストと削減ポイントを完全ガイド

公開日:2025/12/24 更新日:2025/12/24
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システム運用費の相場と内訳を徹底解説|適正コストと削減ポイントを完全ガイド

公開日:2025/12/24 更新日:2025/12/24
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初めに

システム開発を終えても、運用・保守には継続的なコストが発生します。しかし「毎月いくらが妥当なのか」「どこまでが運用費に含まれるのか」が分からず、見積り金額に不安を感じる担当者は少なくありません。
本記事では、システム運用費の相場・内訳・削減のコツを体系的に整理し、クラウド・オンプレミスそれぞれの費用感を具体的に比較します。初めてシステム運用を管理する方でも、根拠あるコスト計画を立てられるようになる実務ガイドです。

システム運用費とは?基本概念と発生理由

システムは「構築して終わり」ではなく、その価値を継続的に発揮し続けるためには安定稼働が不可欠です。システム運用費とは、その安定稼働を維持するために必要となるランニングコストの総称です。

 

多くの企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する中、システムの重要性は増す一方であり、それを支える運用費の管理は、経営戦略上も極めて重要なテーマとなっています。

 

運用費と保守費の違い

実務上、「運用費」と「保守費」は混同されがちですが、その役割は明確に異なります。これらの違いを理解することは、ベンダーからの見積りを精査する第一歩となります。

 

システム運用費:

システムが正常に稼働し続ける状態を「維持・管理」するための費用です。日常的な業務(オペレーション)が中心となります。

主な内容: サーバーやネットワークの稼働監視、バックアップの実行と管理、定型的なオペレーション(データ処理など)、ユーザーアカウント管理、セキュリティパッチの適用状況確認など。

目的: 障害を未然に防ぎ、システムを安定稼働させること(予防)。

 

システム保守費:

システムに問題が発生した際に「修正・復旧」するか、将来的な問題を防ぐために「改善」するための費用です。非定型的な業務(インシデント対応)が中心となります。

主な内容: 障害発生時の原因究明と復旧、プログラムのバグ修正、軽微な仕様変更や機能改善、OSやミドルウェアのバージョンアップ対応など。

目的: 発生した問題を解決し、システムを正常な状態に戻すこと(事後対応・改善)。

 

見積書では「運用・保守費」として一括りにされているケースも多いですが、コストの妥当性を判断するためには、内訳として「運用業務」と「保守業務」のどちらにどれだけの人員や工数が割かれているかを確認することが重要です。

 

運用費が発生する主な要素(人件費・インフラ費・サポート費)

 

システム運用費は、主に以下の3つの要素で構成されています。

 

1. 人件費(運用体制費):

最も大きな割合を占めることが多い費用です。システムを監視し、オペレーションを実行するエンジニアやオペレーターの人件費(内製の場合)や、運用代行ベンダーへ支払う委託費(外注の場合)が含まれます。24時間365日の監視体制を敷く場合は、当然ながらコストは増加します。

 

2. インフラ費(設備・利用料):

システムが稼働する基盤(インフラ)にかかる費用です。

オンプレミスの場合: 自社で保有するサーバーやネットワーク機器のリース料、減価償却費、データセンターの利用料(ハウジング費用)、回線費用、電気代などが該当します。

クラウドの場合: AWS、Azure、GCPなどのクラウドサービス利用料(IaaS/PaaS/SaaS)が該当します。これは使用量に応じた変動費となることが一般的です。

 

3. サポート費(ライセンス・保守契約料):

システムを構成するハードウェアやソフトウェアの「保険」とも言える費用です。

ハードウェアの保守サポート料(故障時に交換・修理を依頼する権利)

OSやミドルウェア、各種パッケージソフトウェアのライセンス料および年間サポート料(アップデートや技術サポートを受ける権利)

 

費用構造を理解することの重要性

システム運用費の構造を理解せず、ベンダーから提示された見積りをそのまま受け入れている状態は、企業経営において大きなリスクとなります。

 

費用構造がブラックボックス化すると、以下のような問題が発生します。

 

コストの妥当性が判断できない: 現在の運用コストが市場相場と比較して高いのか安いのか分からず、コスト削減の余地を見逃す可能性があります。

適切な予算計画が立てられない: 将来的なシステム拡張やクラウド移行に伴うコスト変動を予測できず、予算超過のリスクが高まります。

経営層への説明責任を果たせない: 「なぜこれだけの運用費が必要なのか」という問いに対し、具体的な根拠を示して説明することができません。

 

逆に、費用構造を明確に把握することで、無駄なコストを特定し、SLA(サービスレベル合意書)の見直しや、運用自動化といった具体的な削減策を検討することが可能になります。

 

システム運用費の相場と費用構成

システム運用費の「相場」は、企業の規模やシステムの特性によって大きく変動するため、「いくらが妥当」と一概に断言することは困難です。しかし、費用感を把握するためのいくつかの目安や考え方は存在します。

 

中小企業・大企業別の運用費目安

 

システムの規模や複雑性、求められるサービスレベル(SLA)によって、運用費は大きく変動します。

 

中小企業(小規模システム):

比較的シンプルな構成のシステム(例:Webサイト、小規模な業務アプリ)の場合、月額10万円〜50万円程度がひとつの目安となります。この範囲では、監視や定型オペレーションを主とし、障害時の一次対応までをベンダーに委託するケースが多く見られます。

 

中堅・大企業(中〜大規模システム):

基幹システムや複数のシステムが連携する複雑な環境、あるいは24時間365日の稼働が求められるシステムの場合、月額100万円〜数千万円規模になることも珍しくありません。専門チームによる常時監視、高度なセキュリティ対策、定期的なパフォーマンス分析など、要求される運用レベルが高くなるため、コストもそれに比例します。

 

重要なのは、金額の多寡だけでなく、「その費用でどのようなサービスが提供されているか」を精査することです。

 

クラウドとオンプレミスの運用コスト比較

 

システム基盤としてクラウド(IaaS/PaaS)を選択するか、オンプレミス(自社保有)を選択するかで、運用コストの構造は根本的に異なります。

 
 

比較項目 オンプレミス クラウド (IaaS/PaaS)
初期費用 高い(HW/SW購入費、構築費) 低い(設定費用のみ)
インフラ費 固定費(減価償却費、リース料、DC利用料) 変動費(従量課金)
運用人件費 高い(HW/NW/OS/MWの全てを管理) 低減(HW/NW/OS層の管理が不要になる)
柔軟性 低い(リソース変更に時間とコストがかかる) 高い(必要に応じて即時に増減可能)
コスト特性 予算化しやすい(固定費中心) 予算化しにくい(変動費中心)

 

一般的に、クラウドは初期費用を抑えられますが、リソースの利用状況によってはオンプレミスより高額になる可能性もあります。一方で、オンプレミスは初期投資が大きいものの、長期的なTCO(総所有コスト)ではクラウドより有利になるケースも存在します。

 

クラウドを採用する場合、物理的な機器管理の運用負荷は軽減されますが、「クラウド利用料の最適化(コスト管理)」や「クラウド特有のセキュリティ設定管理」といった新たな運用業務が発生する点に留意が必要です。

 

初期開発費とのバランスを取る考え方

 

かつては「システム運用保守費は、初期開発費の年間15%程度」という目安が語られることがありました。これは、主にオンプレミスのパッケージソフト導入などを想定した経験則です。

 

しかし、以下の理由から、この「15%ルール」は現代のシステム環境には必ずしも当てはまりません。

 

1. クラウドの普及: SaaSやPaaSを利用する場合、初期開発費が極端に低い(あるいはゼロ)である一方、月額利用料としての運用費が発生します。

2. 開発手法の変化: DevOpsのように開発と運用が一体化するアプローチでは、開発フェーズと運用フェーズの境界が曖昧になり、単純な比率での算出が困難です。

3. システムの重要性: 24時間365日停止が許されない社会インフラ的なシステムでは、開発費に対して極めて高い比率の運用費(監視・冗長化コスト)が投下されます。

 

開発費との比率で考えるのではなく、「そのシステムが停止した場合のビジネス上の損失額(機会損失)」と「求められるSLA(サービスレベル)」に基づき、運用費の妥当性を判断するアプローチが求められます。

運用費の算定方法と見積りの注意点

ベンダーが運用費を見積もる際の主な算定方法は以下の通りです。

 

人月単価(工数)ベース:

「監視業務に0.5人月」「障害対応に0.3人月」といった形で、運用業務に必要な工数(人月)を算出し、それにエンジニアの単価を乗じて算出する方法です。最も一般的ですが、「何の業務にどれだけの工数がかかっているか」が不明確になりやすい側面もあります。

 

サービスメニューベース:

「基本監視プラン(月額X万円)」「セキュリティ運用オプション(月額Y万円)」のように、提供する運用サービスをメニュー化し、その組み合わせで費用を決定する方法です。サービス内容が明確である一方、不要なサービスが含まれている可能性もあります。

 

リソースベース(クラウドの場合):

監視対象のサーバー台数やデータ転送量など、インフラのリソース量に応じて費用が変動する方法です。

 

見積りを精査する際は、「SLA(サービスレベル)が自社の要求と合致しているか」「対象業務の範囲(RACI)が明確か」「人月単価の根拠は妥当か」といった点を厳しくチェックする必要があります。

よくある誤解とコスト増加の原因

システム運用費が想定外に増加する背景には、いくつかの典型的な原因が存在します。

 

「作れば終わり」という誤解: 開発完了後、運用体制や予算を十分に確保しないまま稼働させ、障害が多発して結果的に高いコスト(事後対応費)が発生するケース。

クラウドの「使いすぎ」: クラウドの柔軟性を過信し、不要なリソースを起動したまま放置したり、過剰なスペックで運用したりすることで、利用料が高騰するケース。

運用品質の軽視: 運用コストを削減しすぎた結果、SLAが低下し、障害の発見が遅れたり、復旧に時間がかかったりして、ビジネス上の損失を招くケース。

サイレントな仕様変更: 運用部門に通知なくシステムが改修され、従来の運用手順が通用しなくなり、運用負荷が急増するケース。

運用費の内訳と費用算出のポイント

 

運用費を適正化するためには、支出を「固定費」と「変動費」に分解して管理する視点が不可欠です。これにより、削減努力をどこに向けるべきかが明確になります。

 

固定費(ライセンス・サーバー)と変動費(人件費・外注費)の違い

システム運用費における固定費と変動費は、以下のように分類できます。

 

固定費(削減が難しい費用):

ハードウェア/ソフトウェアの保守・ライセンス料: 契約期間中は基本的に一定額が発生します。見直しは契約更新時が主なタイミングです。

データセンター利用料・回線費用: 契約帯域やラックスペースに基づき、固定額が発生します。

オンプレミス機器のリース料・減価償却費: 契約・法定耐用年数に基づき、一定額が計上されます。

 

変動費(見直し・削減の対象となりやすい費用):

運用委託費(人件費): 運用体制(例:24時間→日中のみ)や業務範囲の見直し、自動化の推進によって削減できる可能性があります。

クラウド利用料: リソースの最適化(リザーブドインスタンスの活用、不要リソースの停止)によって削減が可能です。

スポット対応費: 障害対応や臨時オペレーションで発生する費用。運用品質の向上により削減を目指します。

 

まずは自社の運用費の内訳をこの2軸で整理し、「変動費」の中で特に割合の大きい項目から削減策を検討するのが定石です。

費用を見積もる際のチェックリスト

ベンダーから運用費の見積り(または現行契約の見直し)を行う際は、以下のチェックリストを用いて、サービス内容と費用の妥当性を確認してください。

 

【運用範囲に関するチェックリスト】

[ ] 運用対象のシステム、サーバー、ネットワーク機器の範囲は明確か?

[ ] 運用業務の対応時間帯(平日日中のみ、24時間365日など)は適切か?

[ ] 監視対象の項目(死活監視、リソース監視、プロセス監視など)は網羅されているか?

[ ] 障害検知時の対応プロセス(一次切り分け、エスカレーション先)は定義されているか?

[ ] 定型オペレーション(バックアップ、データ連携など)の作業内容と頻度は明確か?

 

【SLA(サービスレベル)に関するチェックリスト】

[ ] システムの目標稼働率(例:99.9%)は設定されているか?

[ ] 障害検知から通知までの時間は定義されているか?

[ ] 障害対応(復旧作業)の目標時間はレベル(重要度)別に定義されているか?

[ ] 現在のSLAは、ビジネス上の要求に対して過剰または不足していないか?

 

【コストに関するチェックリスト】

[ ] 見積りの算定根拠(人月ベース、サービスベースなど)は明確か?

[ ] (人月の場合)各業務の想定工数とエンジニアの単価は妥当か?

[ ] 契約範囲外の作業(スポット対応)が発生した場合の料金体系は明確か?

[ ] 定期的なレポート(稼働報告、インシデント一覧)は費用に含まれているか?

運用費を削減するための具体策

システム運用費は、単に「安くする」ことだけを考えると、システムの安定性を損なうリスクがあります。重要なのは、SLAを維持または向上させつつ、「適正化」を図ることです。

運用業務の自動化・効率化

人件費が運用コストの大部分を占める場合、自動化による効率化が最も効果的な削減策となります。

 

監視の自動化と高度化:

単なるアラート通知だけでなく、AI(AIOps)を活用して障害の予兆検知や原因の自動切り分けを行うツールを導入し、エンジニアの分析工数を削減します。

定型オペレーションの自動化:

RPA(Robotic Process Automation)や運用自動化ツール(Ansible, Terraformなど)を活用し、これまで手作業で行っていたバックアップ確認、アカウント発行、パッチ適用といった定型業務を自動化します。

セルフサービス化:

ユーザーからの簡単な問い合わせ(パスワードリセットなど)に対応するチャットボットや、ユーザー自身が操作できるセルフサービスポータルを導入し、運用窓口の負荷を軽減します。

外注・内製のハイブリッド戦略

すべての運用業務を内製化(自社対応)する、あるいはフルアウトソーシング(丸投げ)する、という二者択一ではなく、両者の「良いとこ取り」をするハイブリッド戦略が現実的です。

 

内製化すべき業務(コア業務):

ビジネス戦略と密接に関わるシステムの企画・改善。

コスト管理やベンダーコントロールといった管理業務。

自社の競争優位に直結するアプリケーションの運用。

 

外注すべき業務(ノンコア業務):

24時間365日のインフラ監視。

定型的なオペレーションや問い合わせ対応。

高度な専門知識が必要なセキュリティ監視(SOCサービスなど)。

 

このように業務の特性を見極め、ノンコア業務を信頼できるベンダーに効率的に委託(またはオフショアを活用)し、自社の貴重なITリソースはコア業務に集中させることが、コスト適正化と運用品質向上の鍵となります。

まとめ

システム運用費は、一度契約すると見直しの機会が少ない「聖域」となりがちなコストです。しかし、本記事で解説したように、その内訳や構造を正確に把握し、クラウドの特性や自動化技術を活用することで、適正化の余地は十分に存在します。

 

自社の運用費が妥当であるかどうかの判断や、具体的なコスト削減策の立案は、専門的な知見を要する作業です。もし現在提示されている見積りの妥当性や、既存の運用体制の見直しに関してお悩みであれば、一度専門家にご相談いただくことをお勧めします。

 
 
 
 
 

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