
はじめに
目次
1. システム開発の流れと全体像
システム開発は、下記の5つのフェーズに分けて考えるとわかりやすく、プロジェクト管理もしやすくなります。
- 要件定義(システムの目的・仕様の確定)
- 設計(基本設計・詳細設計)
- 実装(コーディング・プログラミング)
- テスト(単体・結合・総合テスト)
- 運用・保守(システムの継続的な改善)
これらのフェーズは一連の流れとして進んでいきますが、プロジェクトの特性や開発手法によっては重複・反復が発生することもあります。特にアジャイル開発では、要件定義・設計・実装・テストを短期間のサイクルで繰り返すことが一般的です。
2.システム開発の失敗例、知っていますか?
システム開発で失敗する原因にはいくつかのパターンがあります。ここでは、よくある失敗例とその背景を具体的に紹介し、「なぜ問題が起きたのか」「どうすれば避けられたのか」を整理します。
2-1. 要件が曖昧なまま開発が進んでしまった
【失敗内容】
ある企業では、開発初期にユーザー部門とのすり合わせが不十分なまま要件定義を終えたため、実装段階で「必要な機能が入っていない」と現場から指摘が相次ぎました。
【結果】
再設計 → 実装のやり直し → テストスケジュールの遅延。
最終的に納期が3ヶ月延び、追加費用も発生しました。
【教訓】
- 要件定義時にユーザーの声を丁寧に吸い上げる
- 機能と非機能要件を明文化し、全関係者と認識を揃える
2-2. 工数見積もりが甘く、スケジュールが破綻
【失敗内容】
過去の類似案件をもとに短期間での納品を約束したものの、今回の案件は新規技術の導入が多く、実際の作業は想定の1.5倍以上に膨らみました。
【結果】
開発メンバーの残業が常態化し、離職者も発生。品質も低下し、リリース後に不具合が多発しました。
【教訓】
- 新しい技術を使う場合は、過去実績だけに頼らず余裕のある工数設定を
- 工数は「最低ライン」だけでなく「バッファ込み」で見積もる
2-3. 部門間の連携不足で、要件の認識がズレた
【失敗内容】
営業部門と開発チームとの間でシステムの目的や利用シーンの理解にズレがあり、現場が求める仕様と完成物が大きく乖離してしまいました。
【結果】
開発終了後に追加改修が発生し、二重コストが発生。クライアントとの信頼関係も悪化。
【教訓】
- キックオフ段階で、営業・現場・開発が共通のゴールを共有する
- プロトタイプやモックアップを活用して早期にフィードバックを得る
3. システム開発の主要工程
3-1. 要件定義(システムの目的・仕様の確定)
要件定義はシステム開発における「羅針盤」とも言えるフェーズです。ここで方向を誤ると、後々の工程ですべて修正が必要になり、莫大なコストと時間を消耗します。よくあるステップは以下の通りです。
– 業務課題を洗い出し、システム化の目的を明確化する。
– 機能要件(何ができるか)と非機能要件(パフォーマンス、セキュリティなど)を決定する。
– 関係者(ステークホルダー)との合意形成を行う。
【成功のためのポイント】
– ビジネスの目標と技術要件を一致させる。
– ユーザーの期待を明確にし、必要な機能と不要な機能を切り分ける。
– 適切なドキュメントを作成し、関係者とチーム全員が理解できるようにする。
3-2. 設計フェーズ(基本設計・詳細設計)
要件定義で固まった仕様をもとに、実際にどのように作るかを設計する段階です。設計をしっかり行うことで、実装時の手戻りを防止し、効率的な開発が可能になります。
基本設計では、システム全体の構造や主要機能の仕組み、インフラ構成、アーキテクチャ、外部システムとの連携を検討します。詳細設計では、クラス設計やテーブル定義、API仕様などを細かくまとめ、開発者が具体的にプログラムを書けるレベルまで落とし込みます。
【設計のポイント】
– システムのスケーラビリティを考慮する。
– 使いやすさとセキュリティをバランスよく考慮する。
– データベース設計を最適化し、パフォーマンスを確保する。
3-3. 実装フェーズ(コーディング・プログラミング)
設計書をもとに、プログラムを具体的に作成する段階です。優秀な開発者が揃っていても、設計が不十分だと多くの手戻りが発生してしまいます。
コーディング規約を定め、命名やディレクトリ構造のルールを統一することで保守性の高いコードを書きましょう。また、定期的なコードレビューを行うことで、バグや設計の不備を早期に発見でき、チーム全体の品質向上に繋がります。
さらに、CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)を導入すれば、自動ビルドや自動テストのパイプラインを構築し、開発効率と品質の両立を実現しやすくなります。自動化ツールの活用も非常に有効です。
3-4. テストフェーズ(単体・結合・総合テスト)
完成したプログラムが仕様どおり動いているか、予期せぬエラーが発生しないかをチェックする工程です。テスト工程は、品質保証の要となる重要なプロセスです。
– 単体テスト: 各モジュールが仕様どおり動作するかを確認。
– 結合テスト: 複数のモジュールの連携が正しく行われるかを検証。
– 総合テスト: システム全体の動作確認と最終調整。
この時点で見つかった不具合は運用に大きな影響を及ぼすため、シナリオテストやストレステストも含めて十分な検証を行いましょう。
3-5. 運用・保守フェーズ(システムの継続的な改善)
システムがリリースされた後も、新たなスタートだと捉えるべきです。運用と保守を適切に行い、継続的に改善することで、システムの価値を最大化できます。
– 定期的なメンテナンスやバグ修正、バージョンアップデート
– セキュリティパッチ適用や機能追加
– 障害対応やログ管理
4. システム開発の工数とコスト
4-1. 工数の算出方法と見積もりのポイント
工数の見積もりはシステム開発において最も難しい工程の一つです。過小見積もりをしてしまうと品質や納期を犠牲にし、過大見積もりをするとビジネス上の優位性を失う可能性があります。代表的な手法としては以下があります。
【ファンクションポイント法】
画面数や入力項目数、レポート数などをベースにポイントを割り当て、「1画面あたり5ポイント × 10時間 = 50時間」のように算出する方法です。
【COCOMOモデル(Constructive Cost Model)】
プログラムの行数(ステップ数)を指標とし、実績データに基づいて工数を計算します。「10,000行のコードで200時間と見積もる」など、大規模案件で用いられることが多いです。
見積もりには過去実績やテンプレートを活用し、設計段階での変更や機能追加を見越して「バッファ(余裕期間)」を設定するなど、現実的なリスク管理が不可欠です。
4-2. システム開発コストを抑える方法
– 開発スコープを明確にする。
要件の範囲を明確に定義し、途中の仕様変更や追加開発を最小限に抑えることで、再設計や手戻りによるコスト増加を防げます。
– テンプレートやフレームワークを活用する。
フロントエンドのUIテンプレートや、Laravel・SpringなどのOSSフレームワークを使うことで、ゼロからの開発工数を大幅に削減できます。
– クラウドサービスを利用する。
自社サーバーの構築・運用に比べて、AWSやGCPなどのクラウドサービスを使えば、スケーラブルでコストパフォーマンスの高いインフラ運用が可能です。従量課金制を活かせば初期費用も抑えられます。
5. 開発モデルの種類と選び方
ウォーターフォール型のメリット
- 工程ごとに明確な区切りがあり進行が把握しやすい
- 文書ベースで管理されるため品質管理がしやすい
ウォーターフォール型のデメリット
- 途中での仕様変更に弱い
- 要件の誤りが後半で発覚すると致命的な手戻りが発生
アジャイル型のメリット
- 変更への柔軟性
- ユーザーのフィードバックを反映しやすい
アジャイル型のデメリット
- ドキュメント不足により属人化しやすい
- スケジュール管理が難しい
アジャイル型が向いているプロジェクト
- 小規模〜中規模で仕様変更が多いプロジェクト
- スタートアップやPoC開発
ウォーターフォール型とアジャイル型の比較表
比較項目 | ウォーターフォール | アジャイル |
---|---|---|
変更対応 | 弱い | 強い |
文書化 | 厳密 | 必要最低限 |
リリース頻度 | 少ない | 多い |
適性 | 官公庁、大企業 | ベンチャー、Web系 |
スパイラル型
リスクを早期に見つけることを目的とした反復型モデル。大規模かつ高リスクな開発に適しています。
システム開発の工程で知っておきたい略語
- CI:継続的インテグレーション
- CD:継続的デリバリー
- API:アプリケーションプログラミングインタフェース
- UI/UX:ユーザーインターフェース/体験
6. システム開発の成功事例
実際にあった企業の成功例・失敗例から、プロジェクト推進のヒントを学びます。
- 企業A:JIRAを用いたアジャイル導入で開発期間を30%短縮(※社内ツール活用とスプリント管理)
- 企業C:ウォーターフォール型での緻密な設計により、追加開発コストを20%削減
- 企業B:要件定義が曖昧なまま進行し、リリースが3ヶ月遅延(反面教師事例)
※上記は実際の開発現場に基づいた構成例であり、数値は参考モデルです。
7. まとめ
システム開発プロジェクトを成功させるためには、以下の点が重要です。
– 適切な計画と管理を行い、要件定義・設計・実装・テスト・運用の流れを正しく理解する。
– 予算や工数の見積もりを正確かつ柔軟に行い、変更リスクを最小限に抑える。
– 開発手法(ウォーターフォールやアジャイルなど)を正しく把握し、プロジェクトの性質にマッチした選択をする。
これらを実践すれば、開発途中の混乱や納期遅延、予算超過といった典型的な失敗を回避しやすくなります。企業ごとに最適な手法は異なりますが、開発の根幹となるプロセスや見積もり方法、運用体制を理解しておくことはどの業種・業態でも通用する基礎知識です。ぜひ、自社のプロジェクトに活かしてみてください。
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Y's Blog 編集部