システムフロー図とは?業務フロー図との違いとシステム開発での正しい使い方
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初めに
たとえば「この処理は業務なのか、それともシステムなのか」「どこからどこまでをシステムが担うのか」といった認識が曖昧なまま議論が進むと、設計フェーズや実装フェーズに入ってから大きな修正が必要になることがあります。こうした問題の多くは、フロー図の使い分けが曖昧なことに起因しています。
本記事では、システムフロー図とは何かを整理したうえで、業務フロー図との違いやシステム開発における正しい使い分けを、エンジニア視点でわかりやすく解説します。単なる定義の説明にとどまらず、実務でどのように活用すべきか、どこで混同しやすいのかという点まで踏み込み、設計やコミュニケーションの質を高めるための理解を提供します。
目次
システムフロー図とは何か
システムフロー図の基本的な定義
システムフロー図とは、システム内部で行われる処理の流れや、データがどのように受け渡されるかを図で表現したものです。ユーザー操作や外部システムからの入力を起点に、どの処理がどの順序で実行され、最終的にどのような結果が出力されるのかを可視化します。
特徴的なのは、コードやアルゴリズムの詳細を直接表現するのではなく、「処理のつながり」や「責務の分担」を俯瞰的に把握するための資料である点です。条件分岐、エラー処理、外部連携などを含めて全体像を示すことで、実装前に処理の抜け漏れや矛盾を発見しやすくなります。
また、システムフロー図は仕様書の文章を補完する役割も果たします。文章では理解しづらい処理の前後関係や、複数の条件が絡む流れも、図として表現することで直感的に把握できるようになります。
システムフロー図が表す範囲と対象
システムフロー図が表すのは、原則として人の作業そのものではなく、人の操作やイベントを起点とした「システムの振る舞い」です。API連携、バッチ処理、画面遷移、データベース更新、外部サービスとの通信など、システム内部およびシステム間で行われる処理が対象になります。※運用上の例外として、管理者の手動実行やオペレーター対応など、人がトリガーとなる処理を明示するケースもありますが、主題はあくまでシステム側の処理フローです。
そのため、「誰が操作するか」「どの部署が担当するか」といった情報は主題ではありません。重要なのは、「どの処理がトリガーとなり」「どのコンポーネントが処理を受け取り」「結果がどこに反映されるのか」という流れです。
たとえば、ユーザーがボタンを押した後にどのAPIが呼ばれ、どのテーブルが更新され、どの画面に遷移するのかといった一連の流れを、関係者全員が同じ理解で共有するためにシステムフロー図は作成されます。
システム開発における役割
システムフロー図は、要件を具体的な処理イメージに落とし込む橋渡しの役割を担います。要件定義書に書かれた抽象的な要求を、実際にどのような処理で実現するのかを視覚的に整理することで、設計の方向性を明確にします。
また、設計レビューの場では、システムフロー図が共通の議論土台になります。「この処理はこのタイミングで必要なのか」「例外時の流れは考慮されているか」といった点を、図を見ながら具体的に確認できます。
実装フェーズに入る前にシステムフロー図で合意を取っておくことで、後工程での仕様変更や手戻りを最小限に抑えることができます。つまり、システムフロー図は品質と生産性の両方を支える重要な設計資料といえます。
システム開発におけるフロー図の位置づけ
要件定義や設計工程での使われ方
要件定義フェーズでは、システムに求められる機能や制約条件を整理しますが、その段階で文章だけに頼ると、処理の流れが曖昧になりがちです。多くのプロジェクトでは、この段階でシステムフロー図(または簡易的な処理フロー図)を作成することで、「この要件はどの処理に対応するのか」「どこにシステムの責務があるのか」を明確にできます。特にウォーターフォール型やSIer型の開発では早期の合意形成に使われることが多い一方、アジャイルやプロダクト開発ではスプリント単位で段階的に詳細化されるケースもあります。
設計工程では、さらに詳細な処理順序や条件分岐、エラー時の動きを整理します。システムフロー図は、基本設計から詳細設計へと進む際の中間成果物としても機能し、設計の一貫性を保つ役割を果たします。
設計資料としてのシステムフロー図
設計書の一部としてのシステムフロー図は、画面設計書、ER図、インターフェース仕様書などと密接に関連します。単体で完結する資料ではなく、他の設計資料と相互に補完し合うことで、全体としての理解度を高めます。
たとえば、画面設計書で定義された操作が、システムフロー図のどの処理に対応しているのかを確認することで、設計の抜け漏れを防げます。後から仕様変更が入った場合でも、システムフロー図を更新することで影響範囲を把握しやすくなります。
関係者間の共通認識を作る役割
システム開発では、エンジニア、PM、企画担当者、場合によっては営業や顧客も関わります。それぞれの立場や専門知識が異なる中で、共通認識を作ることは容易ではありません。
システムフロー図は、専門用語を最小限に抑えながら処理の流れを示すことができるため、立場の違いを超えた共通言語として機能します。「この処理はどこで行われるのか」「なぜこの分岐が必要なのか」といった議論を、感覚ではなく構造として行える点が大きなメリットです。
業務フロー図とは何か
業務フロー図の基本的な考え方
業務フロー図は、業務プロセスを人や部署の動きを中心に整理した図です。業務の開始から完了までの流れを時系列で示し、どの担当者がどの業務を担うのかを明確にします。
システムの存在は前提として含まれることがありますが、あくまで業務全体の一部として扱われます。業務の流れを理解し、関係者間で共通認識を持つことが主な目的です。
人や組織の業務を中心にした整理
業務フロー図では、担当者、部署、役職などが明示されることが多く、承認フローや引き継ぎポイントも重要な要素になります。システム処理は「入力」「確認」「登録」といった形で簡略化され、人の作業と一体で表現されます。
このように、人や組織を軸に整理することで、業務上の責任範囲やボトルネックを把握しやすくなります。
業務改善や現状把握での活用
業務フロー図は、現状業務を可視化することで、無駄な工程や属人化している作業を洗い出すために活用されます。業務改善やDX推進の検討段階では、まず業務フロー図を作成することで、改善対象を明確にします。
現行業務を正しく理解せずにシステム化を進めると、業務の非効率をそのままシステムに持ち込んでしまうリスクがあります。その意味でも、業務フロー図はシステム開発の前段階で重要な役割を果たします。
システムフロー図と業務フロー図の違い
対象範囲と視点の違い
システムフロー図はシステム視点、業務フロー図は業務視点という点が最大の違いです。前者は処理やデータの流れを中心に、後者は人や組織の動きを中心に据えます。
同じ業務を扱っていても、視点が異なることで表現される内容や強調点が大きく変わります。
記載内容と粒度の違い
システムフロー図は処理単位で粒度が細かくなり、条件分岐や例外処理まで含めて記載されます。一方、業務フロー図は業務単位で整理され、細かなシステム内部処理は省略されることが一般的です。
この粒度の違いを理解せずに使うと、「情報が多すぎて分かりにくい」「必要な情報が足りない」といった問題が発生します。
使う目的の違い
システム設計や実装を円滑に進めるためにはシステムフロー図が、業務整理や改善を目的とする場合は業務フロー図が適しています。どちらも重要ですが、目的に応じた選択が不可欠です。
システムフロー図を正しく使い分けるポイント
どの工程でどのフロー図を使うか
業務理解や課題整理の段階では業務フロー図を作成し、その後システム化範囲を明確にする段階でシステムフロー図に落とし込む、という流れが一般的です。この順序を守ることで、業務とシステムの境界が明確になります。
実務で混同しやすい注意点
業務フロー図にシステム処理を過度に書き込むと、業務の本質が見えにくくなります。逆に、システムフロー図に人の作業を詳細に描きすぎると、設計資料としての役割が曖昧になります。
作成時には「この図で何を伝えたいのか」を常に意識することが重要です。
システム開発で失敗しないための判断基準
「人の動きを整理したいのか」「システムの処理を整理したいのか」という軸で判断すると、フロー図の選択を誤りにくくなります。目的に合ったフロー図を使うことが、認識ズレや手戻りを防ぐ最も確実な方法です。
まとめ
システムフロー図は、システム内部の処理やデータの流れを整理するための設計資料であり、要件定義や設計工程で重要な役割を果たします。一方、業務フロー図は人や組織の業務の流れを可視化し、業務理解や改善を目的とした図です。見た目は似ていても、両者は視点と目的が明確に異なります。
実務では、まず業務フロー図で業務全体を整理し、その後システム化範囲をシステムフロー図として具体化する流れが効果的です。フロー図は共通理解を作るための手段であり、目的に応じて正しく使い分けることが、システム開発を円滑に進めるポイントといえるでしょう。
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