オフショア開発は東南アジアが最適?ベトナムのメリットと失敗しない選び方
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初めに
目次
東南アジアにおけるオフショア開発の現状
なぜ今東南アジアが注目されているのか
日本国内では深刻なエンジニア不足が続いており、IT人材の採用競争は年々激化しています。特にWeb開発、AI、クラウド、モバイルアプリ分野では即戦力人材の確保が極めて困難です。その一方で、東南アジア各国では若年層人口が多く、政府主導のIT教育投資も進んでいます。人件費は日本の3分の1〜5分の1程度に抑えられるケースも多く、コストと品質のバランスに優れた開発先として評価されています。
さらに、時差が1〜2時間程度と小さいことも大きな利点です。リアルタイムでのコミュニケーションが可能で、日本との業務連携においてもストレスが少ない点が支持されています。
主要国(ベトナム・フィリピン・ミャンマー)の特徴比較
東南アジアと一口に言っても、各国には明確な特性があります。
ベトナムは、理系教育に力を入れており、プログラミング・数学・工学系に強い人材が豊富です。日本語学習者も多く、日系企業向けの開発実績が圧倒的に多い一方で、ビジネスレベルで日本語を運用できるエンジニアは限られるため、ブリッジSEやPMの体制・品質を事前に確認しておくことが重要です。
フィリピンは英語力が非常に高く、コールセンターやBPOといった分野で世界的に評価されています。システム開発においても英語での要件定義や仕様調整が非常にスムーズです。
ミャンマーは人件費が非常に安い反面、2021年以降の政情不安も含め政治リスクやインフラ面の課題が残っており、中長期的な安定性には慎重な見極めが必要です。
ベトナム オフショア開発が選ばれる理由
若く優秀なIT人材の豊富さ
ベトナムでは理系大学出身の学生が非常に多く、毎年数万人規模でITエンジニアが輩出されています。ホーチミン工科大学やハノイ工科大学をはじめとする理工系トップ大学は、アジア圏でも高い評価を受けており、基礎的な数学力・論理思考力・アルゴリズム理解に優れた人材が安定的に供給されています。
また、エンジニアの年齢層は20代〜30代前半が中心で、新しい技術へのキャッチアップが非常に速い点も大きな特徴です。React、Vue、Flutter、AWS、AI、ブロックチェーンなどの最新技術にも積極的に取り組む開発会社が多く、モダンな技術スタックでの開発にも柔軟に対応できます。
さらに、若手中心であっても、日系案件での実務経験を積んだ中堅エンジニアがチームを支える体制が整っている企業も増えており、「若さ」と「実務経験」のバランスが取れた開発体制を構築しやすい点も、ベトナムオフショアならではの強みと言えるでしょう。
人件費と品質のバランスの良さ
ベトナムのエンジニア人件費は概ね日本の約3分の1〜4分の1程度ですが、ホーチミンやハノイなど大都市部では年々単価が上昇しており、役職やスキルによっても大きく異なります。例えば、日本で月額80万円のエンジニアを確保する場合、ベトナムでは20〜30万円台で同等スキルの人材を採用できるケースもありますが、日系案件が多いブリッジSEやPMなどは国内水準に近い単価となる場合もあります。
それでいて、単価が安いだけでなく、設計力や実装力、テスト品質も十分に高水準を維持している点が評価されています。特に日系向け開発実績が豊富な企業では、日本式の品質管理(レビュー、テスト工程、進捗管理)が標準化されています。
日本企業との親和性
ベトナムは親日国として知られており、日本文化や日本企業に対する理解・好意が非常に高い国です。実際に日本語学習者も年々増加しており、日本語対応が可能なブリッジSEやPMが在籍する開発会社も珍しくありませんが、ビジネスレベルのコミュニケーションが可能かどうかは企業ごと・担当者ごとに差があるため、事前の確認が欠かせません。そのため、要件定義や進捗管理、品質確認といった場面でも、適切な体制を整えれば言語面・文化面のハードルを比較的低く抑えられます。
また、納期遵守、品質重視、報連相といった日本企業特有のビジネススタイルにも適応しやすく、「言われたことを正確にやり切る」「決めたルールを継続して守る」といった姿勢を持つエンジニアが多いのも特徴です。こうした価値観の近さは、短期プロジェクトだけでなく、長期的なパートナー関係を築く上でも大きな強みとなっています。
オフショア開発 ベトナムのメリットとデメリット
コスト削減・スピード向上のメリット
最大のメリットはやはり「コスト削減」です。人件費だけでなく、採用コスト、教育コスト、固定費など、国内開発と比較してトータルコストを大幅に圧縮できます。
また、複数人体制で一気に開発できるため、開発スピードの向上も期待できます。国内では1名ずつ段階的に採用して進めるプロジェクトも、ベトナムでは5名〜10名体制で一気にスケールさせることが可能です。
さらに、ベトナム単体では日本との時差が小さいものの、チームのシフト制や他国拠点との併用により24時間体制での開発を実現したり、スプリント開発など柔軟なリソース運用を行える点も実務上の大きな強みです。
言語・商習慣・品質面のリスク
一方で、最大の課題は「コミュニケーション」です。日本語対応が可能なブリッジSEがいない案件では、英語でのやり取りが必須となり、細かなニュアンスが伝わらないケースも少なくありません。
また、仕様変更や曖昧な指示に対して「そのまま実装してしまう」文化の違いも問題になりやすいポイントです。日本企業では背景説明が省略されがちな傾向がありますが、オフショア開発ではその背景や意図を言語化・資料化して共有しないと、成果物にズレが生じるリスクが高まります。
品質面についても、レビュー体制やテスト工程が甘い会社を選んでしまうと、「動くが壊れやすい」「メンテナンス性が低い」といった問題が発生します。
東南アジアオフショアで失敗する典型パターン
価格最優先での発注
最も多い失敗が、「とにかく安い会社」を基準に選んでしまうケースです。オフショア開発では相見積もりを取ると、数倍以上の価格差が出ることも珍しくありませんが、極端に安い見積もりには必ず理由があります。多くの場合、エンジニアのスキルがジュニア中心であったり、PMやQAなどの管理・品質担当が不在だったり、テスト工程がほとんど組み込まれていないといった構造的な問題を抱えています。
また、特に固定価格(請負)で単価が安い案件では、1人のエンジニアが複数プロジェクトを掛け持ちしているケースも多く、レスポンスの遅延や品質のばらつきが発生しやすくなります。最初は「想定より安く作れた」と感じても、仕様の認識違いによる修正対応、バグの多発、再設計のやり直しなどが重なり、結果的に追加費用と時間が膨れ上がることも少なくありません。
実際の現場では、「修正費用が見積もりを超えた」「国内で作り直すことになった」「結局プロジェクトが頓挫した」といったケースも発生しています。価格は重要な判断要素の一つではありますが、「価格だけ」で発注先を決めてしまうと、最終的な総コスト・開発期間・事業スピードのすべてを失うリスクがあるという点を、あらかじめ正しく理解しておく必要があります。
要件定義・管理体制の甘さ
要件定義が曖昧なまま開発をスタートしてしまうのも、非常に危険なパターンです。「作りながら考えよう」という日本的な進め方は、オフショア環境では通用しません。
また、国内側に専任のPMや管理担当がいない場合、進捗確認が形骸化し、気づいた時には手戻りが膨大になるケースも多発します。オフショア開発は「丸投げできる魔法の手段」ではなく、むしろ管理の重要性は国内以上に高いと言えます。
手戻りの多くは「仕様の曖昧さ」「期待値の非共有」「レビュー頻度の不足」といった体制面に起因するため、国やエンジニア個人の問題としてではなく、プロジェクト運営の設計として捉えることが重要です。
失敗しないための国選び・企業選定のポイント
実績・契約形態・管理体制の確認
まず重視すべきは「日系企業向けの開発実績」です。自社と近い業種・規模・技術スタックの実績があるかは必ず確認しましょう。
次に契約形態についても、「請負契約」「ラボ型契約」「準委任契約」など、自社に最適な契約形態を選ぶことが重要です。特に継続開発ではラボ型契約が向いており、専属チームを確保できるメリットがあります。
さらに、PM・ブリッジSE・QA担当などの役割分担が明確か、開発フロー(設計→実装→レビュー→テスト→納品)が標準化されているかも重要なチェックポイントです。
長期パートナーとしての見極め方
オフショア開発を成功させるには、単なる外注先ではなく「長期的に伴走できる開発パートナー」を選ぶ視点が重要です。短期案件では表面化しにくい問題も、長期契約になると品質・スピード・コストに大きく影響してきます。
まず重視すべきなのが、コミュニケーションの質とレスポンスの早さです。質問への回答が曖昧、認識ズレが多いといった兆候は、将来的なトラブルにつながりやすくなります。特に日本企業向けの開発実績が豊富な会社は、日本的な品質意識や報連相への理解度が高く、安心感があります。
次に、PMや開発体制の安定性も重要な判断軸です。担当者の変更が頻繁に起きる会社や、管理体制が弱い会社では、品質が安定せず、手戻りが増える傾向があります。
また、仕様変更や追加開発への柔軟な対応姿勢、契約・運用ルールの明確さも必ず確認しておきたいポイントです。単に「言われたものを作る」だけでなく、課題や目的を共有し、改善提案までしてくれる企業こそ、長期的に信頼できる開発パートナーと言えるでしょう。
まとめ
オフショア開発を東南アジアで検討する企業にとって、ベトナムは現在、最もバランスに優れた有力候補の一つと言えるでしょう。
若く優秀なIT人材、コストと品質の最適バランス、日本企業との高い親和性は大きな魅力です。
一方で、価格だけでの発注や管理体制の不備といった失敗要因も確実に存在します。本記事で解説したポイントを踏まえ、国選び・企業選び・体制構築までを戦略的に設計することで、オフショア開発は「コスト削減の手段」から「事業成長を加速させる武器」へと変わります。
もしこれからベトナムオフショア開発を検討されているのであれば、まずは小規模案件から信頼できるパートナーと実績を積み重ねていくことが、成功への最短ルートとなるでしょう。
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