スクラム開発とは?特徴・プロセス・3つの役割をわかりやすく解説

公開日:2025/12/24 更新日:2025/12/24
  • Web開発
  • アプリ開発
  • バックエンド
  • フロントエンド

スクラム開発とは?特徴・プロセス・3つの役割をわかりやすく解説

公開日:2025/12/24 更新日:2025/12/24
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初めに

スクラム開発は、「チームが自律的に動き、継続的に価値を生み出す」ことを目的としたアジャイル開発手法です。
従来のウォーターフォール型のように、要件定義からリリースまでを直線的に進めるのではなく、短い開発サイクル(スプリント)を繰り返すことで、変化に強い開発体制を築きます。
その中心にあるのが、プロダクトオーナー(PO)・スクラムマスター(SM)・デベロッパー(Developers)という3つのアカウンタビリティ(責任範囲)です。
本記事では、それぞれの役割の目的と責任、チーム間の関係性、そして実践時の課題と成功のポイントをわかりやすく整理します。
スクラム開発を理解したいエンジニアだけでなく、導入を検討する経営層・マネージャーの方にも役立つ内容です。

スクラム開発とは

スクラム開発の基本概念

スクラムは、透明性・検査・適応という経験主義を基盤とし、1〜4週間のスプリント単位で価値を継続的に届けるフレームワークです。
小さな単位で価値のあるインクリメントを届けながら、検査と適応を繰り返すことを重視しています。

各スプリントでは、スプリントゴールを設定し、その達成に向けて作業を進めます。スプリントは、スプリント計画(Planning)→デイリースクラム(Daily Scrum)→スプリントレビュー(Review)→レトロスペクティブ(Retrospective)という公式イベントで構成されます。

また、スプリントの成果物であるインクリメントは「完成(Done)」の定義を満たす必要があります。
これにより、毎回小さな成果物を完成させ、改善を積み重ねながらプロダクトの価値を高めていきます。

スクラムはソフトウェア開発で広く普及しましたが、もともとは製造業の研究(Takeuchi & Nonaka, 1986)を基礎にしています。現在ではマーケティング、研究開発、デザインなど、不確実性の高い領域でも活用されています。
その理由は、短期間で仮説を検証し、改善を繰り返す仕組みが「変化を前提としたマネジメント」に非常に適しているためです。

 

他の開発手法との違い

従来のウォーターフォール型開発は、要件定義からテストまでを直線的に進めるため、途中の変更が難しく、仕様変更や市場変化に弱い側面があります。
一方、スクラムでは短いスプリントを繰り返し、その都度フィードバックを得ながら方向修正が可能です。

ウォーターフォールが「完成度の高さ」を重視するのに対し、スクラムは「価値提供の速さ」を重視します。
「一度決めた計画を最後まで守る」よりも、「顧客や市場に価値を届け続ける」ことを優先するのが大きな違いです。
そのため、スクラムはスタートアップや新規事業、SaaSなど、不確実性の高い領域で特に効果を発揮します。

 

導入が進む背景

近年、DX推進やクラウドサービスの普及により、企業の開発サイクルは加速しています。
加えて、リモートワークやグローバルチームが一般化する中で、チーム間の連携と情報共有の難しさが新たな課題となっています。

スクラムは密なコミュニケーションを重視しますが、最新のスクラムガイドでは同じ場所で開発することは必須ではありません。適切なツールを活用することで、リモート前提の分散チームでも十分に運用できます。
また、経営層にとっても、スクラムは“見えにくい開発プロセス”を可視化する手段になります。
スプリントレビューやバーンダウンチャートにより、進捗・リスク・課題をリアルタイムに把握でき、意思決定をスピーディに行えるようになります。

 

スクラム開発の進め方と構造

スプリントの流れ

スクラム開発は「スプリント」と呼ばれる短い開発サイクルで構成されています。
1スプリントの中では、次の流れで作業が進みます。

  • スプリント計画(Planning):次の期間に何を実装するかをチーム全体で決定
  • 開発作業(Development):メンバーが自律的にタスクを分担し、開発を進行
  • スプリントレビュー(Review):成果を関係者に共有し、フィードバックを受ける
  • レトロスペクティブ(Retrospective):プロセス全体を振り返り、改善点を議論

このプロセスを繰り返すことで、チームの生産性だけでなく、開発プロセスそのものが進化していくのがスクラムの大きな強みです。
単なる開発サイクルではなく、チームの成熟度を高める“学習の仕組み”でもあります。

 

スクラムの3つの柱

スクラムは「透明性」「検査」「適応」という3つの柱によって支えられています。

  • 透明性:進捗・課題・タスクを全員が共有できる状態に保つ
  • 検査:定期的なレビューで成果物とプロセスを確認する
  • 適応:問題や課題をもとに、次のスプリントで改善を行う

この3原則は、単なる形式的なルールではなく、チームの信頼関係を築く基礎となります。
たとえば、進捗を可視化するカンバンボードやバーンダウンチャートは「透明性」を高める代表的な手段です。

また、検査と適応は「学びの循環」ともいえます。
1スプリントごとにチームの行動を振り返り、次のスプリントで試すという“改善のループ”を回し続けることで、チームはプロセス面でも技術面でも着実に進化していきます。

 

バックログ管理の重要性

スクラムでは、作業項目をバックログというリストで管理します。

  • プロダクトバックログ:開発全体の要求や要望をまとめた一覧
  • スプリントバックログ:各スプリントで実施する具体的なタスク

プロダクトオーナーは開発者と協働しながらプロダクトバックログの順序を管理し、チームは最も価値の高い項目から着手します。
この仕組みによって、「いま何が一番重要か」が常に明確になります。

バックログ運用の質がチーム全体の成果を左右するため、POとデベロッパー(Developers)が定期的にリファインメント(見直し)を行うことが重要です。

 

スクラム開発における3つの役割

スクラム開発を支えるのは、「プロダクトオーナー」「スクラムマスター」「デベロッパー(Developers)」という3つの役割です。

それぞれが異なる責任を担いながらも、共通のゴールに向けて密接に協働します。

POが「何を作るか」を定め、SMがチームの環境を整え、開発チームが価値を形にする。

この3者の連携こそが、スクラムが高い成果を生む原動力となります。

 

プロダクトオーナー(PO)

プロダクトオーナーは、「何を作るか」を決める責任者です。
ユーザーやビジネスの要求を理解し、プロダクトバックログ(やるべきことのリスト)の優先順位を明確にします。

また、経営陣・顧客・デベロッパー(Developers)の間に立ち、ビジネスゴールと開発目標を整合させる橋渡し役でもあります。
POが明確なビジョンを持ち、なぜその機能が必要なのかをチームに共有することで、開発メンバーは価値の高い機能開発に集中できます。

一方で、POがすべてを細かく指示してしまうと、チームの自律性が失われます。
理想的なPOは、方向を示し、手段はチームに委ねる姿勢を持つことが重要です。

 

スクラムマスター(SM)

スクラムマスターは、スクラムの理解と実践を促し、チームが最大限の力を発揮できる環境を整える役割を担います。障害の除去支援やプロセス改善の促進を通じて、スクラムが適切に機能するよう導きます。
日々の開発の中で発生する障害(コミュニケーション不足、業務の滞り、技術的課題など)を取り除き、チームが集中できる環境を整えます。

また、スクラムの原則が正しく実践されているかを見守り、チームが形式的な運用に陥らないよう導きます。
SMは「管理者」ではなく「支援者」であり、心理的安全性を高め、メンバーが自由に意見を出せる雰囲気を作ることが成果に直結します。
理想のスクラムマスターは、単なる会議進行役ではなく、チーム全体の成熟を促すコーチとして機能します。

 

デベロッパー(Developers)

デベロッパー(Developers)は、実際にプロダクトを作り上げるメンバーで構成されます。
特徴は、職種の垣根を超えた自己組織化されたチームであることです。

メンバーは自らタスクを決定し、どのように目標を達成するかを主体的に考えます。
テスター、デザイナー、エンジニアといった専門分野を超えて協力し合うことで、スピードと品質を両立します。

責任の所在が明確な一方で、メンバー全員が品質・納期・価値に対して共同責任を持つ点が、従来型開発との大きな違いです。

 

スクラム導入の実践ポイント

スモールスタートでの導入が効果的

スクラムを初めて導入する際は、小規模なプロジェクトや特定の機能開発から始めるのがおすすめです。
いきなり全社的に導入すると、既存の業務フローや評価制度との不整合が生じやすく、混乱を招くリスクがあります。

まずは短期間(2〜3スプリント程度)で試し、効果と課題をチームで振り返ることが大切です。
この反復を通して、組織文化や現場の状況に合わせた「自社流スクラム」を作っていくことが重要です。

 

定例イベントを“儀式化”しない

スクラムにはデイリースクラムやレビュー、レトロスペクティブなど多くのイベントがありますが、形式的に実施するだけでは本来の目的を果たせず、メンバーの負担になります。
デイリースクラムなら「共有」よりも「次に何をすべきかの意思決定」を重視し、レトロスペクティブなら「前回の改善が実行されたか」を振り返ることがポイントです。

特にリモートチームでは、ツールを使った非同期共有(Slackのデイリーレポートなど)を組み合わせると、ミーティング時間を短縮しつつ透明性を維持できます。

 

スクラムを支えるツール選定

スクラム開発の円滑な運用には、タスク管理や進捗可視化のためのツールも欠かせません。
代表的なものに、Jira、Trello、Backlog、Notionなどがあります。

これらのツールを活用することで、バックログ管理・バーンダウンチャート・スプリントレビューの記録などを効率化できます。
ただし、ツールを導入する目的は、「管理を強化すること」ではなく、チーム全体が状況を把握しやすくなり、自律的に動ける環境を整えることにあります。

また、ツールは単なる“可視化”のためではなく、チームの対話を促す仕組みとして活用する視点が大切です。
たとえば、スプリント終了ごとにツール上でKPT(Keep・Problem・Try)を記録しておくと、改善の履歴を追えるだけでなく、新メンバーへのナレッジ共有にもつながります。

 

スクラムがもたらす効果と課題

メリット

  • 顧客フィードバックを迅速に反映できる
  • チームの自律性・士気が向上する
  • 開発プロセスが可視化され、課題発見が早くなる
  • 経営層が現場の状況を把握しやすくなる

スクラムを継続的に実践することで、開発スピードだけでなく、組織全体の意思決定の速さにも好影響を与えることができます。

 

デメリット・導入時の注意点

一方で、スクラムにも課題があります。
とくに初期段階では、役割の混同や形式的な運用が起きやすい点に注意が必要です。

  • POが過度に干渉し、チームの自律性を損なう
  • スプリントの目的が曖昧で、タスクが散漫になる
  • 不適切な運用を行うとイベントが形式化し、会議が増えたように感じられることがあります。(本来スクラムイベントは最小限で、不要な会議を減らす目的があります。)

こうした問題を防ぐためには、スクラムのルールを守ることよりも、「なぜそのルールがあるのか」を理解することが重要です。
プロセスを“手段”ではなく“目的達成の仕組み”として捉えることで、スクラムはより柔軟で実践的なものになります。

 

まとめ:スクラムは「自律するチーム」を育てる仕組み

スクラム開発は、変化の多い時代に適した柔軟な開発手法です。
その本質は、「誰が指示するか」ではなく「チーム全員が価値をどう生み出すか」を重視する点にあります。

3つの役割(PO・SM・デベロッパー(Developers))がそれぞれの責任を果たし、自律的に協働することで、チーム全体の価値創出力が高まります。

また、スクラムは単なる開発手法ではなく、チームの文化や働き方を変える仕組みでもあります。
透明性と継続的改善を重視する姿勢は、組織全体の風通しを良くし、学習する文化を根づかせます。

これからスクラムを導入・改善しようとしている方は、「理想的な形」を目指すよりも、「自分たちの現場に合った最適なスクラム」を作ることを意識してみてください。

 
 
 
 
 

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