システム開発は外注と内製どっちが正解?メリット・判断基準を徹底解説
- Web開発
- アプリ開発
初めに
目次
システム開発における外注と内製の基本的な違い
外注とは何か
システム開発における「外注(アウトソーシング)」とは、システムの企画・要件定義・設計・開発・テスト・運用保守といった工程の一部または全部を、社外の開発会社やフリーランスに委託する形態を指します。業務委託契約や請負契約を結び、成果物の納品を受けるのが一般的です。
外注の最大の特徴は、高度な専門スキルを持つエンジニアやチームを、必要な期間だけ確保できる点にあります。Webシステム、業務システム、スマホアプリ、AI、クラウド、セキュリティなど、領域ごとに最適なベンダーを選定できるのも強みです。一方で、要件定義の精度やベンダー選定を誤ると、コスト超過や品質低下が起こりやすいという側面も持っています。
内製とは何か
「内製」とは、システム開発に必要なエンジニア、デザイナー、プロジェクトマネージャーなどを自社で雇用し、要件定義から設計・開発・運用・改善までを社内リソースで完結させる開発体制を指します。
内製の最大の特徴は、システムの設計思想や運用ノウハウがすべて社内に蓄積される点です。業務部門と開発部門の距離が近く、改善要求や仕様変更への反応が速く、事業戦略とIT戦略を一体化させやすいというメリットがあります。一方で、人材採用・育成・組織づくりといった長期的な投資が必要になります。
ハイブリッド型という選択肢
近年急増しているのが、外注と内製を組み合わせた「ハイブリッド型」です。たとえば、
・要件定義・企画・運用改善は内製
・設計・開発の実装部分は外注
といった分業体制を構築する企業が増えています。
この方法であれば、スピード・専門性(外注)と、ノウハウ蓄積・柔軟性(内製)を両立できます。DX推進や新規事業開発において、最も現実的かつ再現性の高い選択肢として注目されています。
システム開発を外注するメリットとデメリット
システム開発 外注メリット
外注の最大のメリットは、即戦力となる専門人材を短期間で確保できる点です。自社にエンジニアがいなくても、業務システム、ECサイト、予約管理システム、勤怠管理、スマホアプリなど、幅広い領域に対応可能です。
さらに以下のような利点があります。
・採用・教育コストが不要
・プロジェクト単位で予算管理しやすい
・最新技術・トレンドを取り入れやすい
・短期間でのリリースが可能
・リソース調整が柔軟(人員増減が容易)
特に「すぐにシステムを立ち上げたい」「社内にIT人材がいない」「一時的に開発が必要」というケースでは、外注は非常に合理的な選択になります。
外注のデメリットと注意点
一方で、外注には注意すべきリスクも多く存在します。最大の課題はブラックボックス化です。設計思想や内部構造が社内で把握できず、将来の改修や機能追加時に大きな制約が出るケースが少なくありません。
また、以下のようなトラブルも頻発します。
・要件定義の認識ズレによる手戻り
・追加要件による予算超過
・ベンダーの開発品質のばらつき
・担当者変更による引き継ぎトラブル
・レスポンスの遅延
発注側に最低限のITリテラシーやプロジェクト管理能力がないと、外注は「丸投げ」になりやすく、結果として失敗リスクが高まります。
外注に向いている企業の特徴
外注が特に向いているのは以下のような企業です。
・社内にエンジニアがいない
・短期プロジェクトが中心
・新規事業やPoCを素早く試したい
・業務システムの改修頻度が比較的少なく、大規模な機能追加が想定されていない
・ITをコア競争力と見なしていない
スピード優先・初期投資抑制型の企業にとって、外注は極めて現実的な選択肢となります。
システム開発を内製するメリットとデメリット
システム開発 内製メリット
内製最大のメリットは、ITノウハウと業務知識が社内に蓄積され続ける点です。仕様変更の背景や過去の設計思想を理解したうえで改修できるため、長期的なシステム改善が圧倒的にやりやすくなります。
さらに、
・業務部門との連携がスムーズ
・改善サイクル(PDCA)が高速化
・外注費が継続的に発生しない
・セキュリティ管理を内製できる
・自社独自システムとして競争力になりやすい
といったメリットもあります。SaaS事業、EC事業、プラットフォーム事業などでは、内製体制そのものが競争優位性になります。
内製のデメリットとリスク
内製の最大の課題は、人材採用と育成の難易度です。即戦力エンジニアの採用は年々難しくなり、年収水準も上昇しています。また、採用できたとしても以下のリスクがあります。
・育成に1〜3年かかる
・退職による属人化リスク
・教育コスト・人件費が固定費になる
・マネジメント負荷が高い
特に、エンジニア1人に依存した内製体制は、最もリスクが高い状態と言えます。
内製に向いている企業の特徴
内製に向いているのは、以下のような企業です。
・ITが事業の中核そのもの
・継続的なシステム改善が必須
・プロダクトで競争優位を作りたい
・DXを本気で推進したい
・長期視点でIT投資ができる
短期的なコストよりも、中長期の事業成長を重視する企業ほど内製との相性が良くなります。初期フェーズは外注でスピーディに立ち上げ、プロダクトの成長に合わせて徐々に内製化を進める二段階アプローチも一般的です。
外注と内製のコスト・スピード・品質の比較
初期コストと運用コストの違い
外注はフルスクラッチ開発の場合、初期費用が数百万円〜数千万円単位で発生するケースが一般的です。要件定義・設計・開発・テスト・初期運用までを一括で契約するため、「最初にまとまった投資が必要」になります。一方で、SaaSの活用やローコード/ノーコード開発を組み合わせる場合は、50〜300万円程度の小規模投資で構築できるケースも増えており、外注の費用帯は近年多様化しています。月額固定の人件費が発生しないため、短期プロジェクトや単発システムでは総コストを抑えやすいという特徴もあります。
内製の場合、初期の採用コスト(人材紹介手数料など)、教育コスト、環境構築費に加え、エンジニアの年収(600万〜1000万円超、テックリード級では1000万円以上となるケースも一般的です)が毎年固定費として発生します。そのため、立ち上げ初年度は外注より高くなるケースが多いです。
ただし、3年以上の長期運用・継続的な改修が前提のシステムであれば、トータルコストは内製の方が安くなるケースも少なくありません。
開発スピードと柔軟性の比較
外注の強みは、すでに開発体制が整っているため、契約後すぐに着手できる点です。要件が固まっていれば、数か月〜半年程度でリリースできるケースも多く、「とにかく早く形にしたい」場合には非常に有効です。
一方、内製はエンジニア採用・チーム組成・開発環境構築などに時間がかかり、実際に開発を始めるまでに半年〜1年以上(場合によっては1年半程度)かかることも珍しくありません。
ただし体制構築後は、
・仕様変更への即時対応
・小さな改善の高速PDCA
・部門間の調整スピード
といった点で、外注よりも圧倒的に柔軟でスピーディーな運用が可能になります。
品質管理と属人化リスク
外注では、契約条件・成果物レビュー・受け入れテストなどを通じて品質を担保します。一定水準の品質は確保しやすい一方で、
・ベンダーごとの品質ばらつき
・仕様の伝え方による完成度の差
・ドキュメント不足
といったリスクが常に付きまといます。
内製の場合、品質は完全に自社でコントロールできます。コードレビュー、テスト自動化、設計ルールの統一などを徹底すれば、外注以上に安定した品質を維持することも可能です。ただし、
・特定エンジニアへの過度な依存
・ドキュメント不足によるブラックボックス化
が起こると、外注以上に深刻な属人化リスクになります。
どちらの方式でも「体制設計」と「運用ルール」次第で、品質とリスクは大きく変わるという点が最大のポイントです。
外注か内製かを判断するための実践的チェックリスト
自社リソースと人材状況
まず最初に確認すべきなのが、「社内に本当に開発を担える人材と体制があるか」という点です。単にエンジニアが1人いるかどうかではなく、以下のような観点で整理する必要があります。
・自社に要件定義・設計ができるエンジニアがいるか
・実装だけでなく、テスト・運用・保守まで対応できる体制があるか
・エンジニアをマネジメントできるPM(プロジェクトマネージャー)がいるか
・属人化せず、チームとして開発できる人数が確保できるか
・エンジニアの採用や育成に、1〜3年単位で投資できる余力があるか
これらが十分に揃っていない状態で内製を始めると、「開発が進まない」「品質が安定しない」「特定の人に依存する」といった典型的な内製失敗パターンに陥ります。
短期的に人材確保が難しい場合は、無理に内製化を進めず、外注やハイブリッド型で段階的に内製比率を高める戦略が現実的です。
システムの重要度と将来性
次に考えるべきなのが、「そのシステムが今後の事業にどれだけ深く関わるか」という視点です。
具体的には、以下のように分類すると判断しやすくなります。
・売上・利益・顧客体験に直結する基幹システム
・事業の差別化要素となる独自サービス・プロダクト
・バックオフィスや業務効率化が目的の社内ツール
・期間限定・単発で使うキャンペーン用システム
事業の競争力や成長に直結するシステムほど、内製またはハイブリッド型が向いています。
一方で、勤怠管理、経費精算、在庫管理などの汎用的な業務システムは、外注やSaaS活用の方が圧倒的にコスト効率が良くなります。
また将来的に、
・機能追加が頻繁に発生するか
・ユーザー数やデータ量が増えていくか
・他システムとの連携が増えるか
といった「拡張性」も事前に見据えることが重要です。
経営戦略との整合性
外注か内製かの判断は、実は現場レベルの問題ではなく、経営戦略そのものと深く結びついています。
たとえば、
・ITを「単なるコスト」と捉えている企業
・ITを「競争優位の源泉」と捉えている企業
では、選ぶべき開発体制がまったく異なります。
前者であれば、
・とにかく初期費用を抑えたい
・ITは裏方であれば十分
という考え方になるため、外注中心が合理的です。
一方で後者の場合、
・システムそのものが強みになる
・顧客体験や業務効率で差別化したい
・データ活用やDXで中長期成長したい
という前提になるため、内製またはハイブリッドが不可欠になります。
短期のコスト最適化だけで外注を選び、数年後に「内製しておけばよかった」と後悔する企業は非常に多いのが実情です。
3年後・5年後の事業戦略から逆算して開発体制を決めることが、失敗しない最大のポイントです。
まとめ
システム開発における外注と内製には、それぞれ明確な強みと弱みがあります。重要なのは、「自社の事業戦略」「人材リソース」「システムの重要度」「中長期の成長計画」など複数の視点から、冷静に最適解を選ぶことです。
近年ではハイブリッド型が現実的で効果的な解となるケースも増えています。外注か内製かで迷っている企業こそ、一度立ち止まり、自社にとって本当に最適な開発体制は何かを戦略レベルで見直してみてください。それが、IT投資を成功させる最大の近道となります。
「システム開発は外注と内製どっちが正解?メリット・判断基準を徹底解説」
の詳細が気になる方は、
お気軽にお問い合わせください
Y's Blog 編集部

