方式設計書とは?作成手順・システム設計の流れを徹底解説
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初めに
※なお「方式設計書」は組織や開発標準によって指す範囲が異なります。本記事では主に、アーキテクチャ/基盤構成/処理方式/非機能要件の設計方針を整理する資料として説明し、画面・DBなどの詳細は必要に応じて関連資料として扱います。
目次
方式設計書とは何か
方式設計書の定義
方式設計書は、システム開発において要件定義・基本設計を前提に、アーキテクチャや基盤構成、外部連携、処理方式(同期/非同期、バッチ、API等)、非機能要件(性能・可用性・セキュリティ等)に関する設計方針を文書化した資料です。要件定義や基本設計が「何を作るか(要求・仕様)」を中心に整理するのに対し、方式設計書は要件を満たすための全体方針(どう成立させるか)を整理します。
具体的には、システム構成/ネットワーク構成/コンポーネント分割/外部I/F方針/データの流れ/認証認可方式/運用監視・ログ方針/障害時の切り分け方針などを明確に記載します。画面・DB・入出力の詳細仕様は、プロジェクトの標準により基本設計・詳細設計側の資料に分けることも多いため、役割分担を決めて運用することが重要です。これにより、開発者が迷うことなく実装作業に着手できるほか、レビューやテスト設計にも活用されます。
方式設計書は単なるドキュメントではなく、開発全体を円滑に進めるための「設計のナビゲーション」の役割を担います。ここで曖昧な記述や抜けがあると、開発段階での手戻りや不具合発生の原因となるため、正確性が求められます。
方式設計と基本設計の違い
基本設計と方式設計の違いは、設計の抽象度と目的にあります。基本設計書ではシステム全体の構造や機能の概要を定義し、顧客や関係者に承認を得るための「仕様の全体像」を示します。一方、方式設計書では、要件を満たすために採用するアーキテクチャや基盤構成、処理方式、非機能の満たし方を明文化し、後続の詳細設計・実装で判断がブレない状態を作ります。
たとえば、基本設計で「ユーザー管理機能を提供する」と定義されていた場合、方式設計では「認証は外部ID基盤を利用する/パスワードはハッシュ化して保管し、認証情報はアプリケーションから直接参照できない構成にする/個人情報は暗号化やアクセス制御を前提に扱う」といったセキュリティ・構成・連携の方針を整理します。画面項目やテーブル定義などの詳細は、基本設計や詳細設計で確定させます。
このように、方式設計書は基本設計を補完し、開発者に具体的な作業手順を提供する役割があります。基本設計書は「何を作るか(仕様)」、方式設計書は「どう成立させるか(全体方針)」と整理すると理解しやすいでしょう。
方式設計書の目的と重要性
方式設計書の主な目的は、以下の3つです。
- 実装方針の明確化
開発チーム全体で統一された方針を共有することで、仕様の解釈差による手戻りを防ぎます。 - レビュー・テストの効率化
具体的な設計が記載されるため、レビュー時に抜けや不整合を事前に発見できます。また、テスト設計者も方式設計書をもとにテスト項目を作成でき、テストの品質向上に繋がります。 - 保守性・運用性の向上
将来的なシステム変更や運用手順の参考としても使用されます。設計の根拠や判断理由を記録しておくことで、開発後の保守や機能追加の際にも迷わず対応できます。
実務上、方式設計書を正しく作成することは、開発プロジェクトの成功に直結します。特に複数人での開発や大規模システムでは、方式設計書の有無や精度が進捗や品質に大きく影響します。
方式設計書に含める内容
システム構成・アーキテクチャ
方式設計書では、まずシステム全体の構成やアーキテクチャを明確にします。サーバー構成、ネットワーク構成、各コンポーネント間の接続関係、外部システムとの連携方法などを図解で示すことが多いです。
例えば、Webアプリケーションの場合は「Webサーバー、APサーバー、DBサーバーの構成」「ロードバランサーの配置」「クラウド環境でのインスタンス構成」などを記載します。これにより、開発者や運用担当者がシステムの全体像を瞬時に理解できるようになります。
データ設計・画面設計のポイント
方式設計書では、データ設計・画面設計の詳細仕様そのものではなく、後続工程の判断がブレないように設計方針を整理します。
たとえば、データの持ち方(システム間の責務分担や参照元)、整合性担保の考え方、個人情報の扱い(暗号化・マスキング・権限)、入力チェックやエラーハンドリングの統一方針などです。
テーブル定義や画面項目、文字数制限などの詳細は、基本設計や詳細設計の資料で確定させます(プロジェクト標準により方式設計書に同梱する場合もあります)。
処理フローや入出力仕様
システムの各処理における具体的なフローも重要です。バッチ処理やAPI呼び出し、ユーザー操作に対する画面遷移などをフローチャートやシーケンス図で表現します。また、入力データと出力データの仕様も明確に記載し、処理の前後関係やデータ形式の整合性を確認できるようにします。
例えば「注文データ登録処理」では、同期/非同期の採用、整合性の担保(トランザクション・冪等性)、リトライやタイムアウトの方針、エラー時のリカバリ、ログ・監視・アラート方針などを整理すると、後続工程で判断がブレにくくなります。入力項目やDB登録手順などの詳細は、基本設計・詳細設計で具体化します。
方式設計の作成手順
前提条件の整理(要件定義・基本設計の確認)
方式設計書を作成する前に、まず前提条件を整理します。具体的には、要件定義書や基本設計書の内容を再確認し、設計方針や制約条件、利用技術を把握します。このステップで情報に抜けや矛盾がある場合は、基本設計者や顧客と調整する必要があります。
整理すべきポイントの例:
- 必須機能と任意機能の区別
- 利用する技術スタック(プログラミング言語、DB、フレームワーク)
- セキュリティ・性能要件
設計方針の決定と文書化
前提条件を整理したら、実際の設計方針を決定します。ここでは「どのように実装するか」の判断基準を明確にし、方式設計書に文書化します。
例:
- データベースは正規化を基本とし、パフォーマンスが必要な場合はインデックス設計を追加
- 画面遷移はMVCパターンを基本とする
- バッチ処理は夜間バッチとして設計し、処理件数が多い場合は分割処理を行う
文書化の際は、図表やフローを活用し、開発者が迷わず参照できる形式にすることが重要です。
レビュー・フィードバックの活用
方式設計書は作成後にレビューを行い、抜け漏れや誤解がないか確認します。レビューには、開発メンバーやテスト担当者、場合によっては顧客も参加させることがあります。
レビューで指摘された内容は文書に反映し、最終版として確定させます。これにより、実装フェーズでの手戻りを最小化し、品質の高いシステム開発を実現できます。
実務での注意点と失敗しないコツ
曖昧な情報の洗い出し
方式設計書を作成する際に陥りやすい失敗の一つが、「情報の曖昧さ」です。要件や基本設計で不明確な点をそのまま方式設計書に記載すると、実装フェーズで解釈が分かれ、手戻りが発生します。
具体的な対策としては、設計前に以下の点を確認することが有効です。
- 要件定義や基本設計の内容に矛盾や漏れはないか
- 技術選定や制約条件が明確に示されているか
- 画面・データ・処理フローの仕様に曖昧さはないか
これらを整理することで、開発者が迷わず実装できる状態を作ることができます。
関係者との合意形成の重要性
方式設計書は開発チームだけでなく、プロジェクトマネージャーや顧客との合意形成にも使われます。設計内容に変更があった場合、関係者間で認識がずれると、後続工程でトラブルの原因となります。
合意形成を効率化するための方法:
- 設計レビュー会議を定期的に開催
- 重要な設計方針は文書で明示
- 変更履歴を残し、誰がいつ承認したかを明確にする
これにより、方式設計書を「チームの共通認識」として活用できます。
変更管理とバージョン管理の徹底
開発中は仕様変更や要件追加が発生することが珍しくありません。そのため、方式設計書も随時更新が必要です。しかし、更新履歴が管理されていないと、古い情報に基づいて実装が進み、手戻りやバグの原因になります。
ポイント:
- バージョン管理ツール(Gitや社内の文書管理システム)で管理
- 変更点と理由を明確に記載
- 更新ごとに関係者に通知
これにより、常に最新の設計情報を共有でき、開発やテストの効率を高められます。
サンプル・チェックリスト・テンプレート活用法
実務サンプル例の紹介
実務で方式設計書を作成する際、サンプルを参照することは非常に有効です。特に初めて作成する場合や複雑なシステムでは、サンプルをもとに作業手順や記載内容を確認することで、漏れやミスを防げます。
サンプル例には以下の要素が含まれていることが多いです。
- システム構成図やフロー図
- データベース・画面設計の表形式仕様
- 処理手順や入力・出力仕様の詳細
これらを参考に、自社プロジェクトに合わせてカスタマイズすることで効率的に作成できます。
作成チェックリストの使い方
方式設計書作成時には、チェックリストを活用すると抜け漏れを防げます。チェックリストには以下の項目を含めると実務で役立ちます。
- 設計対象の全画面・機能が記載されているか
- 入力チェックやエラーハンドリングの仕様が明確か
- データベース設計が整合性を保っているか
- 処理フローに矛盾がないか
- 外部連携や運用上の制約が反映されているか
チェックリストを用いることで、レビュー前の自己確認が容易になり、品質の向上につながります。
テンプレート活用で効率化
方式設計書作成にはテンプレートを活用するのが効果的です。テンプレートを利用すると、記載すべき項目を網羅できるほか、ドキュメントの形式統一による可読性向上やレビュー効率の改善も期待できます。
テンプレート活用のポイント:
- 自社プロジェクトの特性に合わせて必要項目を調整
- フロー図や表形式で視覚的に整理
- 過去のプロジェクトで有効だった記述例を組み込む
これにより、方式設計書の作成時間を短縮しつつ、内容の精度を保つことができます。
まとめ
方式設計書は、システム開発における「何を作るか」から「どう作るか」をつなぐ重要な資料です。本記事で解説したように、方式設計書の作成には以下のポイントが押さえられていることが重要です。
- 方式設計書の役割を理解する
- 基本設計を具体的な実装レベルに落とし込み、開発チームや関係者間の共通認識を形成すること。
- 記載内容を網羅する
- システム構成・アーキテクチャ、データ設計・画面設計、処理フローや入出力仕様など、実務で必要な情報を漏れなく整理すること。
- 作成手順を明確にする
- 前提条件の確認、設計方針の決定、レビュー・フィードバックの反映など、手順を踏むことで精度を高めること。
- 実務上の注意点に留意する
- 情報の曖昧さを洗い出し、関係者と合意形成を行い、変更管理やバージョン管理を徹底すること。
- 効率的な作成方法を活用する
- サンプル、チェックリスト、テンプレートを活用して効率化するとともに、品質の高い方式設計書を作成すること。
方式設計書を正しく作成することで、開発中の手戻りを減らし、システムの品質や保守性を向上させることができます。また、チーム全体での共通認識を作ることにより、プロジェクトの進行をスムーズにし、後工程のテストや運用でも活用可能です。
システム開発の成功には、方式設計書の精度と活用方法が非常に大きな影響を与えます。本記事で紹介したポイントや手順を参考に、実務で活用できる方式設計書を作成してください。
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