
AIを導入したいが社内リソースが足りない、外注では柔軟性に欠ける―そんな悩みを持つ企業に注目されているのが「AIラボ型開発」です。これは専門人材を継続的・柔軟に確保しながら、自社専用チームとしてAI開発を推進できる体制のこと。本記事では、AIラボ型開発の特徴、メリット、導入方法、従来外注との違い、そして実際の成功事例までをわかりやすく解説します。
AIラボ型開発とは?基本概念と特徴を解説
ラボ型開発とは何か?一般的な定義
ラボ型開発とは、開発会社とクライアントが契約を結び、一定期間専属の開発チームを提供する形態です。このチームは通常、要件定義から実装、テスト、運用支援に至るまで、中長期的にプロジェクトに関与します。一般的な請負型外注では、契約時に決められた仕様に基づく成果物の納品がゴールとなりますが、ラボ型では柔軟に要件変更や改善が行えるため、よりアジャイルで持続的な開発が可能です。
AIラボ型開発の構造と特徴
AIラボ型開発では、AIに特化した専門チームが編成されます。チームには、AIエンジニア、データサイエンティスト、MLOpsエンジニア、ビジネスアナリストなどが含まれ、単なる開発だけでなく、PoC(概念実証)からモデル開発、デプロイ、改善サイクルの運用まで幅広く対応します。また、クライアント企業の業種や目的に応じて、自然言語処理、画像解析、需要予測などの技術を柔軟に活用できる点も特徴です。
従来の外注との違いとは
従来の外注は、成果物ベースで契約を結ぶ請負型が主流です。これは、明確な仕様とスコープをもとに納品までを外注する形ですが、AI開発のように不確実性が高く試行錯誤が不可欠な分野では、変更対応のしづらさが課題になります。AIラボ型開発では、チームがクライアント企業に常駐、またはリモートで密接に連携するため、要件の変更や改善のスピード感が大きく異なります。また、内製化を視野に入れた技術移転やドキュメント整備にも対応しやすいという利点があります。
AIラボ型開発のメリットとデメリット
柔軟性とスピードの両立
AIラボ型開発は、スピードと柔軟性の両立が可能な体制です。たとえば、開発中に業務要件が変化した際にも、チームのスキルや構成を迅速に見直し対応することができます。アジャイル開発との相性も良く、スプリントごとのフィードバックを反映しながら、短期間で高品質なアウトプットを生み出せます。さらに、継続的なKPI評価や改善提案を繰り返すことで、AIシステムの価値を最大化できます。
コスト最適化と人材確保
AI人材の採用は、国内外問わず激化しており、自社で採用・育成するには時間もコストもかかります。ラボ型では、必要なスキルを持つ人材を即時に確保でき、しかもプロジェクトに専任で関与するため、立ち上がりが早いのが特長です。また、月額契約による固定費管理が可能なため、予算計画も立てやすくなります。採用リスクの軽減という点でも、中小企業から大手まで幅広いニーズに応えられる手法です。
課題・注意点とは?
一方で、成功にはクライアント側のプロジェクト管理能力が問われます。進行状況の共有、品質レビュー、要件の優先順位づけといったマネジメントを怠ると、期待通りの成果が出ない可能性があります。また、開発終了後のナレッジ継承が不十分な場合、内製化や自走が困難になります。したがって、導入初期から技術ドキュメントの整備、コードの共有、教育支援といった仕組みづくりが求められます。
AIラボ型開発の体制構築・導入手順
体制構築に必要な準備
まずは、自社におけるAI導入の目的と、解決したい課題を明確化することが第一歩です。次に、それを実現するために必要なスキルセットを洗い出し、どのような人材が必要かを定義します。また、受け入れ体制として、社内担当者のアサインや開発環境の整備、セキュリティ対策などを講じる必要があります。これらを明確にした上で、信頼できるパートナー選定を行うことが重要です。
契約形態とチーム編成
AIラボ型では、一般的に月額固定の契約形態をとります。期間、稼働時間、役割ごとの単価が設定され、プロジェクトフェーズに応じて柔軟に調整可能です。例えば、PoC段階では少人数チーム、本番展開時にはMLOpsエンジニアを追加するといった対応も容易です。開発以外にも、ドメイン知識を持つビジネスアナリストやUXデザイナーがチームに加わるケースもあります。
スムーズな立ち上げのポイント
立ち上げ時は、開発チームとクライアント側との目標共有が最優先です。特にKPIの定義、開発方針、成果物の形式などを明文化することで、齟齬を防げます。オンボーディング期間には、業務フローの理解やデータ構造の説明、使用ツールの統一といった地ならしが必要です。また、コミュニケーションのルール(Slack利用、週次ミーティングなど)を明確化し、円滑な連携を促すことも大切です。
AIラボ型開発の活用事例と企業紹介
ソフトバンク:社内DX推進における事例
ソフトバンクでは、社内の業務改善や新規ビジネス開発を目的にAIラボ型開発を採用しています。AIによる業務自動化(RPAと連携した自然言語処理)や、店舗内監視カメラ映像の解析による来店者行動分析など、多様なプロジェクトを推進中です。特にPoCから本番運用までを一貫して担える体制が、高速なPDCAの実現に寄与しています。
ABEJA:AI人材を活用した継続開発
ABEJAは、AIプラットフォームを提供する先進的な企業であり、ラボ型開発を通じて顧客企業との共創を行っています。たとえば、大手流通業向けには、店舗内カメラ映像を用いた動線解析を提供。来店者の行動パターンや回遊状況を可視化し、棚配置や売り場改善の根拠データとして活用されています。ABEJAはこれらのAIモデルの精度向上や保守対応も継続的に担うことで、導入後も価値が持続するAI運用をサポートしています。
引用元:https://www.abejainc.com/insight-for-retail-productdetail/dousen?utm_source=chatgpt.com
サイバーエージェント:内製化支援の取り組み
サイバーエージェントでは、AI事業本部が中心となり、顧客企業のAI内製化を支援するサービスを展開しています。単なる開発支援にとどまらず、教育コンテンツの提供やワークショップの実施、ナレッジ共有会の開催など、人材育成と自走支援に重点を置いたラボ型開発を実践。これにより、継続的にAIを利活用できる企業文化の醸成を目指しています。
AIラボ型開発を成功させるためのポイント
ベンダー選定時のチェックリスト
信頼できるパートナーを選定するには、以下の視点が重要です
- 過去のAIプロジェクト実績
- 専門人材の質と安定性
- コミュニケーション体制の明確さ
- 柔軟な契約・変更対応
成功の可否を左右するのがベンダー選定です。過去のAIプロジェクト実績が豊富で、業界理解のある企業を選びましょう。さらに、チームの人材が継続的に供給可能か、離脱リスクが低いかを確認する必要があります。また、契約や体制に変更が生じた場合でも、柔軟に対応できる運用力や、プロジェクトの可視化支援体制も重視すべき要素です。
プロジェクトマネジメントの工夫
AI開発は、成果がすぐに出にくく、試行錯誤の連続となるため、アジャイル型の運営が適しています。週次で進捗確認を行い、データの課題やモデルの精度をリアルタイムで把握しましょう。JIRAやNotionといったタスク管理ツールを活用し、進行を透明化することで、ステークホルダーとの信頼関係も築きやすくなります。
成果指標(KPI)設定と継続改善
AI開発の評価指標は、単なる精度や処理速度ではなく、最終的なビジネス成果につながるかが重要です。業務時間削減率、売上向上、顧客満足度向上など、目的に即したKPIを設定し、それに基づいた改善サイクルを確立しましょう。また、定期的なレポートやレビューを実施することで、経営層への報告と改善活動が一体化され、継続的な価値創出に寄与します。
まとめ
AIラボ型開発は、単なる開発アウトソースを超えた「共創型」の開発体制であり、柔軟性・スピード・内製化支援のすべてを実現できる手法です。変化の激しいAI分野において、持続的な成長と競争優位を築くためには、ラボ型開発の導入が大きな鍵を握るでしょう。自社に最適なAI開発体制を築きたい方は、まずは専門ベンダーにご相談いただき、体制構築に向けた第一歩を踏み出してみてください。
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Y's Blog 編集部