アジャイル開発に設計書は必要?メリット・デメリットと最適な作成基準をわかりやすく解説

公開日:2026/01/16 更新日:2026/01/16
  • Web開発
  • アプリ開発

アジャイル開発に設計書は必要?メリット・デメリットと最適な作成基準をわかりやすく解説

公開日:2026/01/16 更新日:2026/01/16
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初めに

アジャイル開発では「ドキュメントは最小限」「動くソフトウェアを重視」と言われる一方で、実務では設計書不足による手戻り・属人化・引き継ぎトラブルが多く発生します。そのため、多くのプロジェクトで「どこまで設計書を作るべきか?」という悩みが生まれます。
本記事では、アジャイルにおける設計書の必要性、メリット・デメリット、プロジェクト規模に応じた最適な作成基準を体系的に整理します。実務でそのまま使える判断軸を示すことで、無駄を省きながら品質と再現性を両立した開発を実現するための指針を提供します。

アジャイル開発における設計書の基本概念

アジャイルと設計書の関係性

アジャイル開発は、ウォーターフォール型のように初期工程で詳細な設計を固めるのではなく、短いサイクルで要件と仕様を更新しながら進める開発手法です。そのため、設計書についても「必要なタイミングで、必要な量を作る」という考え方が基本になります。

アジャイルが重視するのは、顧客に価値を届ける動くソフトウェアであり、過度に詳細な設計書を初期段階で作り込むことは推奨されません。しかし、これは「設計書が不要」という意味ではなく、プロダクトのスケールや複雑度、チーム体制に応じて最適化する必要があります。

 

なぜ設計書が議論になるのか

アジャイル開発では、ユーザーストーリーやプロダクトバックログのような軽量な要求管理手法が中心になります。そのため、従来型プロジェクトのような詳細設計書が存在せず、「どこまで設計を明文化するべきか」がチームやプロジェクトによって異なります。

結果として、設計書の必要性・粒度・更新頻度が議論の対象となり、特に複数チーム・外部委託・長期開発では、文書化不足がリスクとして顕在化します。

 

ドキュメント最小化の誤解

「ドキュメントは最小限」というアジャイル原則が誤解され、極端にドキュメントを作らないケースが見られます。しかし、本来の意図は「価値を生まないドキュメントを減らす」ことであり、意思決定の記録や設計の根拠、仕様の共有のための必要最低限の文書は不可欠です。

必要な設計情報を残さないことは、スプリント内の効率を下げるだけでなく、後工程の品質低下や人的依存の強化につながり、長期的にはアジャイルの価値を損ないます。

 
 

設計書を作るメリット

品質の向上と手戻り防止

設計書があることで、機能の仕様や制約条件をチーム全員が同じ認識で共有でき、作り直しや追加修正を減らすことができます。特に、複雑なビジネスロジックや外部API連携のある機能では、事前の設計整理が欠かせません。また、テスト基準も明確になり、品質担保の基盤を整える効果があります。さらに、担当者が変わった際の引き継ぎがスムーズになり、開発の属人化を防げる点も大きなメリットです。

 

情報共有・引き継ぎの効率化

アジャイル開発ではメンバーの入れ替わりが発生しやすく、オンボーディングの効率化は大きな課題です。設計書を適切に整備しておくことで、新規メンバーが迅速にプロジェクト理解を深められ、属人化を防ぐことができます。また、プロダクトが長期運用される場合、後工程の保守チームへの引き継ぎにも役立ちます。さらに、開発履歴や判断根拠を記録しておくことで、過去の仕様変更の意図を正しく把握でき、将来的な改修や拡張判断の精度向上にもつながります。

 

チーム内コミュニケーションの標準化

設計書は、仕様検討やレビューの基準を統一する役割も果たします。文章や図を通じて意思決定の根拠を可視化することで、誤解を最小限に抑え、コミュニケーションの質を向上させます。結果として、打ち合わせやレビューの時間も削減され、チーム全体の生産性向上につながります。さらに、共通の参照資料があることで議論の論点がぶれにくくなり、判断スピードが向上するため、スプリント内での意思決定もよりスムーズに進むようになります。

 

設計書を作るデメリット

工数増加とスプリント速度の低下

設計書作成には確実に工数が必要であり、特に短いスプリントで進めるアジャイル開発ではスピードとのトレードオフが課題となります。必要以上に詳細な文書を作ろうとすると、開発そのものより文書作りに時間を取られるケースもあり、チームのベロシティ低下を引き起こします。さらに、スプリント内で処理しきれないドキュメント作業が積み残されると、次のスプリント以降に負債として蓄積し、長期的な開発効率を下げる要因にもなります。適切な粒度を見極めた文書化が不可欠です。

 

形骸化したドキュメントのリスク

設計書を作りすぎると、更新されないまま放置される「形骸化ドキュメント」が増えます。これは参照されないだけでなく、誤った情報を残したまま進むことで開発効率を下げるリスクがあります。アジャイルでは、文書は「使われ続けること」が重要です。さらに、不要な設計書が積み重なると、必要な情報が埋もれてしまい、メンバーが本当に参照すべき内容にたどり着きにくくなる問題も生じます。文書量の最適化は、継続的な改善にも直結します。

 

更新コストが高くなる問題

仕様変更が頻繁に発生するアジャイル開発では、変更のたびにドキュメントを更新する必要があります。文書量が多いほど更新の手間も増え、最新状態を保つための負担は無視できません。そのため、設計書の量と更新性のバランスを考えながら運用することが求められます。また、更新作業が滞ると実装との乖離が生まれ、レビューや引き継ぎ時に混乱を招く原因にもなります。運用設計の段階で、どの設計書を“必ず更新するもの”として扱うかのルール設定も重要です。

 

どこまで設計書を作るべきか?判断基準

プロジェクト規模と複雑度による判断

設計書の量は、「規模」「複雑性」「関係者の多さ」に比例させるのが基本です。

  • 小規模・シンプル → 最小限の設計書で十分
  • 中規模 → UI/UX・データ構造・APIなど主要部分を文書化
  • 大規模 → 連携構造・アーキテクチャ・非機能要件まで網羅的に文書化

これらの分類はあくまで一般的な目安ですが、プロジェクトの特性や業務領域によって必要な設計書の粒度は変動します。特に複数チームでの開発や外部ベンダーとの協働では、設計書がコミュニケーションの基盤となるため、一定量の文書化は必須です。さらに、こうした文書は単なる仕様記録にとどまらず、意思決定の根拠や変更履歴の共有にも活用されるため、長期的な品質維持と開発効率に直結する重要な役割を果たします。

 

設計書の優先度を決める4つのポイント

設計書の優先度を判断する際は、以下の4点を基準とすると効果的です。

  • リスクの高さ(失敗時の影響度)
  • 複雑性(技術的・業務的な難易度)
  • 再利用性(文書が今後も参照されるか)
  • 関係者の多さ(共有が必要な人数)

これらの観点を総合して、作成するかどうか・どの粒度で作るかを判断すると、無駄な工数を減らしながら必要な品質を確保できます。また、この基準はプロジェクトの途中でも見直し可能であり、状況の変化に合わせて文書量を調整することで、開発スピードと品質のバランスを最適化するための実践的な指針として機能します。

 

実務で使われる最低限の設計書セット

一般的なアジャイルプロジェクトで最低限必要とされる設計書は以下です。

  • 画面仕様書 / UIワイヤーフレーム
  • API仕様書
  • ER図 / データ構造設計
  • シーケンス図(主要フローのみ)
  • 非機能要件の定義書

これらは、開発・テスト・保守の全フェーズで参照されるため、アジャイルでも「必要最小限の基本セット」として位置付けられます。また、これらの文書が揃っていることで、チーム間の認識齟齬が減り、属人化の防止や引き継ぎの円滑化につながるため、特に複数メンバーでの共同開発では効果が顕著に表れます。

 

アジャイルで使える設計書テンプレートと作成ポイント

ユーザーストーリーマップ

ユーザーストーリーマップは、ユーザー視点でサービス全体を俯瞰し、優先度をつけるためのフレームワークです。アジャイル開発では要件定義の中心となり、設計書を作る前の「共通認識形成」として非常に有効です。ストーリーの粒度・関係性を整理することで、後続の設計作業の手戻りを大幅に削減できます。

 

API仕様書・ER図テンプレ

API仕様書は、外部システムとの連携やフロントエンドとのインターフェース設計に欠かせません。スキーマ、エンドポイント、リクエスト/レスポンス例、バリデーションなどをテンプレート化しておくことで、品質のばらつきが防げます。
ER図も同様に、データ構造を視覚化することで整合性を保ち、機能追加時の影響範囲を迅速に確認できます。

 

プロジェクトフェーズ別の最適テンプレート

アジャイル開発ではフェーズごとに必要な設計情報が異なります。

  • 初期フェーズ:ユーザーストーリー、簡易ワイヤー、データモデル概要
  • 実装フェーズ:API仕様書、ER図、詳細ワイヤーフレーム
  • 運用フェーズ:引き継ぎ用ドキュメント、運用ガイド、非機能要件管理表

フェーズに応じてテンプレートを使い分けることで、過不足のない文書管理が可能になります。また、このように設計ドキュメントを段階的に整理していくことで、変更に強い開発プロセスを実現でき、チーム全体の作業効率や保守性も大きく向上します。

 

まとめ

本記事では、アジャイル開発における設計書の位置づけを整理し、メリット・デメリットから実務での最適な量の判断基準まで体系的に解説しました。設計書は「作るか、作らないか」ではなく、「どれを、どの粒度で作るか」が重要です。プロジェクトの規模や体制、外部パートナーの有無などによって、必要とされるドキュメントの範囲は大きく変わります。設計書を適切に運用できれば、変更への強さ、コミュニケーション効率、品質の安定性が大きく向上します。自社のプロジェクトに合わせて最適な設計書の運用を整えたい場合は、ぜひお気軽にご相談ください。

 
 
 
 
 

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