
目次
基幹システム開発の重要性と導入の背景
企業における基幹システムの役割とは
基幹システムは、企業活動の根幹を支える情報システム群を指します。販売管理、在庫管理、会計、受発注、勤怠、給与計算など、業務の中核を担う各種プロセスを統合・自動化することで、組織の生産性と正確性を高めます。これにより、ヒューマンエラーの削減、業務効率化、経営判断の迅速化といった効果が期待されます。
なぜ今、基幹システム開発が注目されているのか
近年、デジタルトランスフォーメーション(DX)の波が押し寄せ、多くの企業が老朽化したレガシーシステムの刷新を急いでいます。クラウド対応、API連携、モバイル対応、リモートワーク環境などの要件が高度化している現在、柔軟性と拡張性を備えた基幹システムのニーズは急速に高まっています。
さらに、グローバルなサプライチェーンの複雑化、ビジネススピードの加速、法令改正への迅速な対応なども、基幹システム刷新の大きな要因となっています。
基幹システムの構成要素と設計の考え方
主な構成要素(販売・在庫・会計など)
基幹システムは一般的に、以下のようなモジュールで構成されます。
- 販売管理:受注〜売上〜請求〜入金回収までの流れを統合管理
- 在庫管理:入出庫、棚卸、在庫引当をリアルタイムで把握
- 会計管理:仕訳入力、元帳作成、月次・年次決算をカバー
- 人事・給与管理:従業員情報管理、勤怠、給与計算の自動化
- 生産管理(製造業):原材料調達、製造工程、進捗管理を支援
これらは個別に構築されることもありますが、部門横断的な業務連携と情報統合の観点から、統合パッケージとして導入されるケースが主流です。
モジュール間の連携と情報統合の重要性
基幹システムにおける価値は、各モジュールがリアルタイムかつシームレスに連携することで最大化されます。たとえば、在庫情報と販売情報が連携していなければ、欠品リスクや過剰在庫が発生しかねません。情報が部門を超えて統合されることで、経営層にとっても意思決定が迅速かつ的確になります。
基幹システム開発のプロセスと成功のポイント
要件定義から設計・実装・テストまでの流れ
基幹システム開発の一般的な流れは以下の通りです。
- 要件定義:現行業務の洗い出し、将来像の明確化、機能・非機能要件の整理
- 基本設計・詳細設計:画面設計、業務フロー、データ構造などを設計
- 実装(開発):プログラムを構築
- テスト工程
- 単体テスト:個別プログラムの検証
- 結合テスト:各機能間の連携確認
- 総合テスト・受入テスト:実際の業務に即したテスト
- 本番移行・運用開始:稼働環境へ移行し、業務スタート
- 保守・運用:障害対応、法改正対応、機能追加などを継続
開発におけるリスクとその回避策
基幹システム開発は、コスト・期間・組織巻き込みなど大規模なプロジェクトとなるため、失敗リスクも高くなります。特に以下の点に注意が必要です。
- 要件の曖昧さ:仕様変更が頻発し、開発遅延・コスト超過に繋がる
- 業務部門の関与不足:現場ニーズとの乖離が起こる
- テスト不足:本番稼働後のトラブルリスクが高まる
これらを防ぐためには、フェーズごとのマイルストーン管理やステークホルダーとの密なコミュニケーションが鍵となります。
基幹システム構築時の技術的選択肢とトレンド
オンプレミスとクラウドの比較
現在の基幹システム構築では、クラウド化が主流となりつつあります。以下はオンプレミスとクラウドの比較です。
項目 | オンプレミス | クラウド型 |
---|---|---|
初期費用 | 高い(サーバー購入・構築費) | 低い(月額課金制) |
カスタマイズ | 高度な対応が可能 | 一部制限あり |
保守・運用 | 自社対応が必要 | ベンダーに任せられる |
拡張性 | インフラ投資が都度必要 | スケーラブルに対応可能 |
自社のITリソースや中長期的な運用方針に応じた選定が求められます。
API連携・ローコードツールの活用
近年は、業務に即した柔軟なシステム構築のために、以下の技術が注目されています。
- API連携:既存の外部サービスとの統合をスムーズに実現
- ローコード/ノーコード:開発リソース不足でも、現場主導で業務アプリを構築可能
これにより、内製化とスモールスタートがしやすくなり、業務プロセスの変化にも迅速に対応できます。
基幹システム開発会社の選び方と比較ポイント
依頼先の種類(SIer、パッケージベンダーなど)
基幹システムの開発を依頼する際、開発会社は大きく以下の3つのタイプに分類できます。各社の特徴を理解し、自社に最適なパートナーを選定することが重要です。
SIer(システムインテグレーター):要件定義から開発・運用まで一気通貫で対応
富士ソフト株式会社
富士ソフトは、1970年創業の大手独立系SIerで、多様な業種に向けた基幹システムの開発実績を有しています。公共・金融・製造領域に強みを持ち、大規模プロジェクトに多数対応。オンプレミスとクラウドの両方に対応できる柔軟性があり、AIやIoTを活用したDX推進も支援します。長年の実績と高度なプロジェクトマネジメント力が魅力です。
株式会社シーイーシー
製造業を中心に、業務システムの構築・運用を得意とする独立系SIerです。生産・在庫・原価管理など、現場業務の深い理解を強みに、スクラッチ開発からERP導入支援まで柔軟に対応。IoT連携やスマートファクトリー領域の実績もあり、現場視点に立った最適な提案を行います。
TIS株式会社
ITホールディングスグループの中核企業として、金融・製造・公共分野を中心に豊富な開発実績を持つ大手SIerです。要件定義から運用保守までの一貫対応が可能で、SAPやSalesforceなど外部サービスとの連携にも強みがあります。クラウドネイティブ開発やデータ活用を重視し、先進技術を活用したソリューションを提供しています。
株式会社日立ソリューションズ
日立グループのIT中核企業として、製造・インフラ・公共分野を中心に多数の基幹システム導入実績を持ちます。ERP・CRM・SCMなど各業務領域に強く、国内外での大規模導入にも対応。セキュリティや運用ノウハウに優れ、長期運用を見据えたシステム設計を得意としています。
パッケージベンダー:特定業界向けの汎用システムを提供、短納期・低コストに強み
株式会社オロ
株式会社オロは、自社開発のクラウドERP「ZAC Enterprise」を展開するパッケージベンダーです。広告・IT・コンサルティング業など、プロジェクト型ビジネスに特化した機能性を持ち、短期間での導入と高い業務適合性が評価されています。導入企業は1,000社を超え、中堅企業向けERPとして支持されています。
株式会社OSK
株式会社OSKは大塚商会グループのソフトウェア開発企業で、中堅・中小企業向けERPパッケージ「SMILE」シリーズを提供しています。販売・会計・在庫管理など幅広い基幹業務に対応し、全国規模での導入実績を持ちます。サポート体制も整っており、長期運用を見据えた安定性が魅力です。
株式会社ワークスアプリケーションズ
ワークスアプリケーションズは、大手企業向けERP「HUE」を提供する国産パッケージベンダーです。会計・人事・調達など、企業の基幹業務を統合的に管理できる機能を備え、柔軟なカスタマイズ性も強みです。AIや自動化機能を搭載し、業務効率の向上にも寄与します。
クラウドサービス提供企業:SaaS形式でのスモールスタートが可能
サイボウズ株式会社
サイボウズは、SaaS型業務アプリ構築ツール「kintone」を提供するクラウドベンダーです。ノーコード・ローコードでの柔軟なカスタマイズが可能で、業種や業務に応じたシステム構築をスピーディに行えます。API連携や拡張性にも優れ、特に中小企業における段階的なシステム導入に適しています。
freee株式会社
freeeは、会計・人事労務などの業務領域に特化したクラウドERPを提供しています。初期費用を抑えつつスピーディな導入が可能で、特に中小企業を中心に導入実績を拡大しています。API連携機能を活用すれば、他サービスと組み合わせた業務改善も容易です。
株式会社マネーフォワード
マネーフォワードは、会計・請求・人事などのSaaS型業務支援ツールを提供しています。特にクラウド会計サービスで知られており、中小企業やスタートアップに適したコスト・運用性が特徴です。業務の可視化と自動化を支援し、業務負荷の軽減を実現します。
比較表:依頼先の種類別 基幹システム開発会社の比較
会社名 | 種類 | 業種対応力 | 得意分野 | 導入実績 | 特徴的な強み |
---|---|---|---|---|---|
富士ソフト株式会社 | SIer | 製造・流通・金融・公共など広範 | 大規模開発、DX対応 | 大手企業中心 | 幅広い業界経験と大規模案件の実績 |
株式会社シーイーシー | SIer | 製造業 | 生産・在庫・原価管理 | 中堅企業中心 | 業務理解に基づく提案とIoT連携 |
TIS株式会社 | SIer | 金融・製造・公共など | ERP導入支援、データ活用 | 国内外で豊富 | 高い業界別知見と先端技術対応力 |
株式会社日立ソリューションズ | SIer | 製造・インフラ・公共 | ERP、SCM、CRM | 大手企業多数 | 業務ノウハウとグローバル対応力 |
株式会社オロ | パッケージベンダー | 広告・IT・コンサル業 | クラウドERP(ZAC) | 1,000社以上 | 短納期・業界特化型ERP |
株式会社OSK | パッケージベンダー | 製造・小売・サービス業など | ERPパッケージ(SMILEシリーズ) | 数千社規模 | 国内導入実績多数、サポート体制も万全 |
株式会社ワークスアプリケーションズ | パッケージベンダー | 大手企業全般 | ERP(HUE) | 上場企業中心 | 高機能ERPとAI自動化機能 |
サイボウズ株式会社 | クラウドサービス企業 | 全業種(汎用性高) | 業務アプリ構築(kintone) | 中小企業を中心に | ノーコード、柔軟性・拡張性に優れる |
freee株式会社 | クラウドサービス企業 | 中小企業(バックオフィス中心) | 会計・人事SaaS | 30万社以上 | クラウドERPとしてのスモールスタートが可能 |
株式会社マネーフォワード | クラウドサービス企業 | 中小企業全般 | クラウド会計・人事・請求 | 中小企業を中心に | 自動化と業務効率向上支援 |
自社に最適なパートナーを選ぶためには、業界理解度、開発実績、技術対応力、導入後のサポート体制など多角的に比較検討することが不可欠です。特に中堅・中小企業の場合、導入のしやすさや柔軟な対応力が鍵となるでしょう。
評価軸(実績・業界理解・サポート体制など)
開発会社選定時は、以下の観点を複合的に評価しましょう
- 実績とノウハウ:自社業種・業務に近い開発実績があるか
- 技術力と対応力:最新技術への対応力、トラブル対応の柔軟性
- 運用・保守体制:導入後の長期的支援体制が整っているか
- コミュニケーション力:要件整理や折衝をスムーズに行えるか
複数社と比較検討することで、失敗リスクを最小限に抑えることができます。
まとめ:基幹システム開発の成功に向けて
自社に合った開発パートナーと構築戦略が鍵
基幹システム開発は、単なるIT導入ではなく「企業改革の一環」と捉えるべき取り組みです。システムが業務にフィットして初めて、その真価を発揮します。そのためには、現場の声を反映した要件定義と、信頼できるパートナー選びが不可欠です。
今後の展望と対応すべき課題
今後は、クラウドネイティブやAI活用、業務プロセスの自動化といった動きがますます加速していきます。基幹システムも、従来の「静的な仕組み」から、変化に強い「動的なプラットフォーム」へと進化することが求められています。
基幹システム開発のご相談は、お気軽に当社までお問い合わせください。
要件整理からベンダー選定、プロジェクト管理までトータルに支援いたします。
「基幹システム開発とは?構築プロセスや会社選定のポイントを徹底解説」
の詳細が気になる方は、
お気軽にお問い合わせください

Y's Blog 編集部