2020.10.4

『熱意の源泉』

米田 龍平

<自己紹介>

株式会社Y’sの米田です。
現在、代表取締役で会社を経営する一方で、チーフクリエイティブオフィサー(CCO)として、
デザイン制作のクオリティ管理デザイナーの教育、そしてさらには企業文化を充実させていくことを担っています。

僕自身がどんな人間かは、過去ブログで書かせていただきましたので、
興味を持ってくださった方は下記をご覧いただければ幸いです。

<Y’sの歴史> 第一章 Y’sができるまで
<Y’sの歴史> 第二章 Y’s創業期〜成長期
<Y’sの歴史> 第三章 Y’s 進化のとき

 

今までは僕の生い立ちからはじまり、Y’sが今に至るまで全3回に分けて書かせていただきました。

今回から新たに、ブログをスタートしていきたいと思います。
内容は実体験に基づき「経営者」&「デザイナー」という立場で話せることが中心になります。

Y’sで頑張って働いてくれているメンバー、これからY’sに入りたいと考えてくださっている方々、
仕事を通じてY’sに興味を持ってくださった方々に向けて、お伝えしていけることがあるのでないかと考えております。

そして、
第1回のテーマは
“技術や経験より最も大切なこと”
ということで仕事における『熱意の源泉』について追求してみたいと思っています。

それではよろしくお願いいたします。

 

はじめに


●「上司からしっかりと教えてもらっているのに、同じ失敗を繰り返してしまう」
●「入社時点ではやる気いっぱいだったのに、しばらくして辞めてしまった」
●「同じ職種、同じスキルを持っているはずの同僚と、どんどん差が開いていく」
●「期待されて大切なポジションを任されたのに、なかなか成果がでない」

こういった問題を持っている方は多いのではないでしょうか?

僕自身、これらの問題が企業文化における最大のテーマではないかと考えています。
そこで、どうして起こってしまうのかということを考えてみることにしました。

こういったことはすでに研究され分野化されている内容かもしれませんが、
僕が感じたことを僕自身の言葉でまとめることが大切だと思いましのたので、
未熟な部分があるかと思いますがお付き合いいただければと思います。

コンテンツ


・なんでアイツの方が仕事できるんだろう?
・仕事に対する熱意ってなんだ?
・ガソリンを積んでいる人ってどんな状態?
・経営者などが落ちいる罠とは?
・ガソリンを積むってどういうこと?
・ガソリンを積み込むための3つのできること
・まとめ

なんでアイツの方が仕事できるんだろう?

同じ職種、同じスキルを持っているメンバー2人であるにも関わらず、同じパフォーマンスが出せず、一方は、どんどん仕事を進め、ぐんぐん成長しているのに対して、もう一方は、なかなか結果が出ず、仕事にミスやムラが生じてしまう。
その仕事のミスやムラをベテランメンバーや上長がしっかりとフォローし、納品まで持っていくのに多くの時間を有し、それでもそのメンバーはまた同じことを繰り返してしまうのです。

それは「上司」が悪いからでしょうか?
それとも「性格」の問題でしょうか?
はたまた「愛社精神」が足りないからでしょうか?
まったく別の原因があるのでしょうか?

なぜ、メンバーによって、仕事のミスやムラが出てしまうのか?
その原因は「上司」、「性格」、「愛社精神」も含まれているかもしれませんが、大きな原因のひとつは「仕事に対する熱意」の有無だと感じています。

当たり前に感じると思いますがが、意外と様々な原因が混ざり合っているため、そこにフォーカスを当ててみることをせずに僕は今までうまく対応できていなかったと思っています。

仕事に対する熱意ってなんだ?

ここでいう「仕事に対する熱意」とは
「仕事が楽しい」ですとか、「仲間が優しい」ですとか、そういったレベルの話ではありません。
どんな辛いことがあっても諦めずに、頑張り続けられる熱意が今の仕事に対してあるかどうかです。
相手の利益を本気で考え、自分は何ができるのか、前向きに動けるバイタリティそのものです。

どれくらいのレベルかというと、例えていうなら、今の仕事を『好きな異性』と置き換えればわかりやすいかもしれません。
好きな異性なら、ちょっとやそっとのことでは諦めないし、興味を引きたいのでいろいろなことを考えるし、できれば長い付き合いを望むし、何よりその人のことを心の底から真剣に考られると思います。

今の仕事が『好きな異性』と同じくらいと考えられれば、辛いことがあっても頑張れるし、結果を出してクライアントに気に入られたいと思えるし、ずっと任してほしいと思えるだろうし、その仕事のことを心の底からやりたいと思えるはずです。

「仕事に対する熱意」とは、やりたくてやりたくてしょうがない仕事と思えること、誰かに何かを言われなくてもその仕事に対して真剣に考える続けられる状態になることとここでは定義します。


もうひとつの例えとして「仕事に対する熱意」を車で例えてみます。
ボディやエンジン、タイヤなどの性能が職種&スキルであり、
たくさん走ったことでエンジンやタイヤが馴染んでいけばそれが経験となります。
そして、車は燃料、つまりガソリンがなければ走れません。
そのガソリンこそが「仕事に対する熱意」だと考えています。

そのガソリンの質と量によって、走りのパフォーマンスが変わると考えています。

結論、同じ職種、同じスキルを持っているメンバー2人であるにも関わらず、同じパフォーマンスを出せない理由のひとつは、このガソリンの質と量が異なるからだと考えています。

そしてこのガソリンを積むことが何よりも大切で難しいことだと思っています。

ガソリンを積んでいる人ってどんな状態?

Y’sにおいて、どういうメンバーがこのガソリンを積んでいるかというと、

●会社立ち上げから関わり、高い目標を持っている経営層
●メンバーを統括し、周りから評価されやすい環境にいるチーフ
●スキルを磨き、経験を積んだことで、周りから頼られるようになったリーダー
●エンタメのデザインがやりたくてやりたくてしょうがない新人

などがあげられます。
共通して言えることは、ある程度の役割(権限や裁量)を与えてあげることで、
こちらが何かを言わなくても自走してくれるということです。

逆にガソリンを積んでいないメンバーは、
すぐにガス欠を起こし、レッカー車を呼んだり、走ることを諦めたりするわけです。
最初からガソリンを大量に積んでいるメンバーもいれば、ちょこちょこ自分で補給するメンバーもいるし、誰かに補給してもらうメンバーもいるわけです。
それらのタイプを3つに分けてみました。(あくまで僕の独断と偏見で考えた分別です)

[タイプ1]ガソリン無限タイプ

▶︎採掘型(自分でガソリンの原料となる油田を掘り当てたので、燃料は枯渇しない)
→経営者 / 原作者 / アーティスト / 職人などに多いタイプ
自分にしかできない特定の使命を感じ、一心不乱に没頭したりこだわったりする

[タイプ2]自家発電タイプ

▶︎ソーラーパワー型(ソーラーカーのようにいつでもどこでもエネルギーを補給することができる)
→何をするかではなく、仲間のためや目の前の困っている人のためなど役に立つことを考え動くこととができるタイプ
→自分の今置かれている立場を理解し、任されたことにしっかりと答えたいと動ける

[タイプ3]補給タイプ

▶︎燃料タンク型(定期的に補給することで走ることができる)
→職種に関わらず、役割を与えられ、それに見合った評価や対価で動けるタイプ
→仕事をすることで自分自身の成長を感じることができる

(※仕事の内容や結果次第で、タイプは1にも2にも3にもなり得るし、複数持ち合わせることもあると思っています)

 

仕事をスタートする時点においては、[タイプ1]は最も少なく、その次に[タイプ2]
そして多くの人は[タイプ3]に属するのではないかと思います。
多くの人は新しい仕事(or会社)に就いて始めて、ガソリンを補充することを考え出します。

つまり、その会社においてガソリンを積み込む仕組みが存在するかによって
走りのパフォーマンスに大きく影響する、すなわち会社の組織や文化に大きく依存するわけです。

そして、そういった会社が世の中には多く存在し、最初に定義した問題にぶつかる人が多いのではないでしょうか?

経営者などが落ち入る罠とは?

企業文化について日々考えている中で、僕自身が落ち入っていた罠に気づきました。

僕はタイプでいえば経営者なので「タイプ1」に該当します。
今後、何か重大なことがない限り、ガス欠することはないと自分でも思っています。
とはいえ、もともとは[タイプ3]でした。
でもデザイン経験を積んだことと経営者として重要なポジションを任されたことで、
次第に[タイプ1]となり、今は[タイプ3]であったことを思い出せないくらいです。

そんな[タイプ1]に属する僕が採用や教育に関わっていたため、今まで大きな間違いをしていました。

それは履歴書や作品集をみて、スキルや経験がありY’sに興味を持ってくれてている人を採用すれば、一定の教育をすることで、あとは勝手に自走してくれると思っていたことです。

常に人はガソリンをたくさん積んでいることが当たり前だと考え、自分と同じものだと思い込んでいました。

すると、簡単だと思える仕事で失敗したり、周りと馴染んでいなかったりしていることを不思議に感じ、自分の採用が甘かったと間違った判断をしてしまうわけです。
相手のせいにしてしまった時点で、会社との距離が生まれ、互いの信頼がなくなり、次第にクオリティが落ち、ガス欠を起こし、もう一度ガソリン積むことができず辞めてしまうわけです。

僕自身が長い間、辞めてしまった原因を突き止めることができなかったことで、
能力も高く実績もある人たちと仕事ができるチャンスを自ら潰してしまっていた気がします。

同時に今なお、ガソリンをうまく積むことができないでいるメンバーもいるだろうし、
そういったメンバーにガソリンを積んであげなくてはいけないと対策を進めているわけです。

ガソリンを積むってどういうこと?

ガソリンを補給できさえすればいいと簡単に言えますが、
その手段というのは様々で、会社のビジョンやミッション、仕事の内容や仕組み、
メンバーひとりひとりの職種や性格、成長によって日々変化していくものだと思います。

とはいえ、補給方法は大きく2つのパターンに分別できると思います。
それは自分で補給できるか補給してもらうかです。

[補給方法1]自分でガソリンを補給する

[1-1]すでにある仕事を変化させる(成長を感じられる)
[1-2]やりたい仕事を取りにいく(好きな仕事ができる)

[補給方法2]他のメンバーがガソリンを補給する

[2-1]周りがもっとできることを認めていく(評価される)
[2-2]クライアントから認められる(信頼関係を作れる)

こういう要素がガソリンとなり、メンバーの自走につながると感じています。

ガソリンを積み込むための3つのできること

補給する方法は、自分自身から行動するのか、他のメンバーから補給されるのか。
2つの方向から様々なプロジェクトを推し進めY’sの企業文化を見直しているところです。

 

[できること1]成長を感じられる仕事にするためのプロジェクト

小さなことから大きなことまで様々な取り組みができると思います。

▶︎ 言われてから動いていた仕事を積極的にアイデアを出し提案してみる
▶︎ 自分ができるだけでなく、後輩を教えられるようになってみる
▶︎ 新しいスキルを身につけて出来る仕事の範囲を広げてみる
などなど

Y’sは今まではクライアントが提案した仕事を引き受けることが多かったですが、現在はマーケティングをはじめとする新しい領域にチャレンジし提案していける仕組みを作っています。

[できること2]自分からやりたい仕事を取りに行くプロジェクト

▶︎ 自分が関わりたいと思った会社やコンテンツの担当者に声をかけるように営業に提案してみる
▶︎ 従来はクライアントの担当だったことを、こちらでやらせてもらうように働きかけるかけてみる
▶︎ 広報業務を充実させ、自分たちの知名度をあげ、仕事を選んでいけるようになってみる
などなど

新しい仕事は別に営業が主体でなければいけないわけではありません。
営業メンバーだってクリエイターがやりたいと思える仕事をとりたいと思っていると思います。
自分たちの仕事をもっと宣伝するのも他人任せでなく、自らおこなっていくべきです。

[できること3]周りからもっと声をかけ切磋琢磨していくプロジェクト

▶︎ できなかったことだけに焦点を当てるのではなく、何ができているかを一緒に考えてみる
▶︎ どんな小さな結果でも、後輩やチームの頑張りをで新鮮な内に認め褒め合ってみる
▶︎ 結果だけでなく、プロセスなどお互いの経験も共有し合ってみる
などなど

特に褒め合うプロジェクトはCOS(クリエイティブアウトソーシング部門)が文化として根付かせてきたことであり、結果を出したメンバーを褒めていく文化を社内全部に行き渡らせるプロジェクトです。


これらのすべてプロジェクトが前向きに進んでいけば、常にガソリンを積んだ状態で仕事ができます。

最終的にこれらのプロジェクトを進めることで[補給方法2]の[2-2]に繋がり、
Y’sの仕事に対してクライアントから評価をいただけることになると考えています。

まとめ

ここまでの話をまとめます。
同じ職種、同じスキルを持っているメンバー2人であるにも関わらず、同じパフォーマンスが出せないのはなぜか、それは「仕事に対する熱意」に差があるのだと考えています。

その熱意は仕事をする前から持っているメンバーもいれば、仕事の中で見つけ出していくメンバーもいます。

誰しもがはじめから熱意があるわけではなく、熱意を作り出すのは、
メンバー本人たちであり、ときには周りの環境や仲間であると思います。

メンバー自身にできることは、
目の前の仕事の中で成長を感じられるように工夫すること、
自分が関わりたいと思える会社やコンテンツに出会うための努力をすることで、
やりたくて仕方がない仕事に近づけていくことができると思います。

一方で、僕ら経営者や上に立つ者ができることは、
切磋琢磨し合える仲間を採用し、
社会に必要とされるミッションを担い、そのミッションをクリアするためのビジョンを掲げ、
メンバーみんながやりたくて仕方がない仕事を作り出していくことができると思います。


再度、車の話に置き換えると、
どんな車に乗るのか(どんな職種やスキルを選ぶのか)
誰と一緒にその車に乗るのか(誰と一緒に働くのか)
走りたいと思える道や風景を想像し(どんな仕事をすべきなのか考え)
行きたいと思える場所を作ること(次につながる結果を出せること)

そのためには、たくさんの「ガソリン」が必要となります。

それは、「速く走れるようになった」と感じる自分自身かもしれません。
あるいは、「この車、乗りごごちがいいね」と言ってくれる仲間かもしれません。
はたまた、「あの場所に行けてよかった」と言ってくれるクライアントかもしれません。

でもそれが必ず、次のガソリンとなり、ずっと走り続けることができるのだと思います。

「仕事に対する熱意」がどんなことよりも重要であり、大切であると思います。
皆さんはこの熱意についてどのように考えていらっしゃいますか?

僕はこれから、
もっと頑張れよ!」、
お前はそんなもんか!」、
辛かったら休めよ。」などと片付けることなく、
熱意が生み出される仕組みづくりをこの先、不退転の覚悟で徹底していこうと思います。

長くなってしまいましたが、最後までご覧いただきありがとうございました。


次回は仕事の手順においてもっとも重要でもっとも難しいと考える
「ヒアリング」について、デザイナーとしての観点から追求したいと思っています。

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